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2014年01月27日

『なぜフランスでは子どもが増えるのか フランス女性のライフスタイル』中島さおり(講談社現代新書)

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「フランスに学ぶ少子化対策」

 日本で少子化が問題となってすでに久しい。ところが、同じ経済先発国でもフランスでは子どもが増えている。私も長年フランスに住んでいて、子どもを持つ両親に対する保護政策が功を奏しているのだろう位しか考えていなかった。しかし、中島さおりの『なぜフランスでは子どもが増えるのか』を読むと、そう簡単にはまとめられない事情がからんでいることが良く分かる。

 話は、洋服の胸の開き加減から始まる。中島は日本とフランスの服の違いは、胸の谷間の深さの違いにあると言い、フランスの服は日本のものより5ミリほど深くなっていて「女がセックス・アピールを誇示することに対する社会の許容度の差が、あの五ミリの差なのである。」と述べる。
 私の家の近くに、日本人のシェフが経営するフレンチレストランがある。豊かな胸のウェイトレスが入ると男性客が急増し、彼女がやめると男性客が減ると、シェフの奥様が話してくれたことがあった。嘘のような本当の話である。たかが5ミリ、されど5ミリなのである。

 下着の話も面白い。日本では女性が下着を買うときに男性が付き添うのはなかなか抵抗があるが、フランスでは普通のことだ。そして、日本でヒットしている下着は、フランスでは売っていないらしい。つまり体型をカバーするような下着だ。これはフランスでは薬屋にでも行かないかぎり、ほとんど売っていないようだ。中島の結論は以下の通りである。

 「日本とフランスの下着は、目指す方向が逆なのではないかと私は思う。日本の女性下着の強みは、上に何か着たときに女性を美しく見せることだ。それは、万人向けに女性を美しくするが、それを脱がせる男のことだけは考えていない。」

 手をたたいて賛成している不埒な紳士の姿が見えるようだが…

 フランスでは元来「婚外恋愛」が基本であるというのも興味深い。かつての貴族らの結婚は財産相続が目的であり、それ故に夫婦間に恋愛感情は育たないし、そういった感情を持つことは「恥」であった。故に恋愛スキャンダルには寛大だ。クリントン大統領は、研修生との密会が大スキャンダルになったし、日本でも愛人問題であっという間に首相の座を下ろされた人もいた。だが、フランスのミッテラン大統領は、隠し子についてマスコミに質問されたときに「いるけれども、それで?」の一言で済んでしまった。

 フランスは恋愛に関して「大人」であり、カップルで人生を楽しむのが当然となっていて「子どもは神様」ではない。中島の夫はフランス人だが、娘が2歳の頃パパとママが仲が良いのに嫉妬して父親に「C’est pas ta maman!(あんたのママじゃない)」と抗議したらしい。日本だと父親はどうするだろうか。分かった分かったと言って、母親を譲るか、一緒に遊ぼうと言うのではないだろうか。だが中島の夫はあわてずに「Oui, mais c’est ma femme(だが、私の妻だ)」と言う。

 中島の考察は「母親というアイデンティティ一色に染まらなくてもよい。つまり、子どもを産むことによって失うものが比較的少ない。」となる。確かに日本では、出産すると夫と二人で出かける機会は極端に少なくなり、母親は家に縛り付けられ、友人と会う機会も少なくなる。せいぜいママ友ができるくらいだろうか。フランスでは幼い子をベビーシッターに預けて、二人で食事や映画に行くことは当たり前だ。要するに大人中心であり、カップル中心なのである。

 ピルが解禁され、専業主婦がほとんどいなくなり、パックスという「結婚」より緩やかな関係が存在し、3歳以上はほとんど子どもの教育費がかからない。こういった条件があるからこそ、フランスでは子どもを産みやすく、育てやすいのである。移民が多いせいだという人もいるが、移民が出生率に貢献しているのはせいぜい0.1%にすぎない。

 日本がフランスの制度を取り入れたからといって、すぐに子どもが増えるとはいえないだろう。培ってきた伝統が違うので、そう簡単な話ではない。だが、「草食系」男子が増えたから、若者が結婚しなくなったからと嘆く前に、結婚しやすく、子どもを産みやすく、子どもを育てやすくする方法を考えてみる価値はある。この一冊にはそのためのヒントが数多く潜んでいる。


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