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2005年10月27日

『急がば廻れ’99』鶴岡雄二(音楽之友社)

急がば廻れ!'99 →bookwebで購入

「青春とポップスの甘い思い出に負けない大人になる?」

新しいことに出会ったとき、大きく分けて人は二通りの反応をするようです。
1つは、「ああ、世の中そんなものだと思ってた」というもの。もう1つは「え! まさかそんなことだったとは……」というもの。 前者はいろんなことに「やっぱりね」とうなづきながら自分の中でストーリーを作り続け、それに合致しないものは信じなくなってしまう。一方、後者はことあるごとにびっくりするけれど、その度に右往左往して振り回される……。考えてみるとどちらも一長一短ですが、こと読書に関する限りは「世の中、そんなものだ」と思うより「すごいな、そういうことになってるのか」と感動する方が楽しめるのではないかと思います。

この文章を読んでいる方のなかに「急がば廻れ '99」あるいは「Walk, Don't Run '99」というタイトルを見たときに、何か思い出すものがある人がどれくらいいるか分かりません。しかし「あ、懐かしいな」と思った人、おそらく40代後半から60代前半の人にとって、この本はどんな存在なんだろうか、と考えたとき、そんなことを思ってしまいました。というのは、この本は、多くの人たちが音楽、特に青春と緊密に結びつくかたちでポピュラー音楽に対して持っている淡い想いのようなものを、根こそぎひっくりかえしてしまうかもしれないからです。

この本は、ひとことで言うと、音楽史上には存在しないことになっている多くのスタジオプレイヤーたちの活躍を掘り起こすことによって、ポピュラーミュージックの産業面に切り込んだ「音楽ノンフィクション・ハードボイルド・ノヴェル」(オビのコピーより)です。そのせいで、60年代のポップスにロマンチックな想いを抱き続けている日本ポップス界の某ベテランシンガー・作曲家の怒りを買ったという話もあるようです。
もう1つ面白いのは、インターネットというメディアがこのタイミングで存在しなかったら、おそらくこのような事実が書かれることもなかっただろうという意味で、歴史的な巡り合わせを感じさせる本となっていることです。

立場によって様々な評価を受けるだろうと思われますが、青春時代を美化して甘酸っぱい想い出にひたるのではなく、これから新しいことに挑戦してみようと考えている人、まだ自分の思い込みをひっくり返されることを楽しめる団塊世代におすすめします。

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