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2008年05月22日

『光源氏が愛した王朝ブランド品』河添房江(角川選書420)

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『源氏物語』がブームだ。それもそのはず、今年は源氏物語の存在が記録として確認されてからちょうど千年目にあたる。さまざまな場所でこの物語に関する情報が紹介されているが、千年も昔の日本にこのようにたおやかで繊細な文化が栄えていたとは、今さらながら驚嘆せずにいられない。

源氏物語をはじめとする古典文学となると、私は正真正銘の門外漢だ。学生の頃に習った古文・漢文の知識は、まったく身につかないまま現在に至ってしまった。若かりし頃は何の痛痒も感じなかったが、今となっては少なからず後悔している。

源氏物語は現代語訳も出版されており、古文の素養がなくても楽しめる。そればかりか、この作品は世界各国の言語に訳されているのだ。英独仏は言うに及ばず、イタリア語、スペイン語、チェコ語、トルコ語、フィンランド語、四種類の中国語、二種類の韓国語などなど、紫式部の物語は“日本文学”を超越し、世界文学として流通している。シェークスピアの作品と同列なのだ。

しかし「日本人なのに(であるゆえに?)源氏物語を読まない」という状況もあるだろう。そこをどう打破するかが問題だ。

そんな時に1冊の本にめぐり会った。標記の書籍である。著者の河添は平安文学、とりわけ源氏物語の研究に従事する、第一線のエキスパートだ。こんな超一流の専門家が私のような“門外漢のド素人”のために書き下ろしてくれたのが、この本である。源氏物語に興味を覚える良き入口となろう。

主人公の光源氏が想いを遂げるために使う手練手管、そしてその際の女性へのひめやかな気遣いなど繊細な心のあやが展開される源氏物語には、さまざまな小道具が登場する。古今東西、女性をなびかせるのに男の真心だけでは不充分と見受けられる。一方女性もこまごまとした品々を利用している。もてはやされるのは、千年の昔も今も変わらない「舶来品」だ。“唐物”といわれていた陶磁器、ガラス、布、香料などだが、何が好まれ、どのように使われていたかが河添のソフトな語り口でわかりやすく紹介されている。

今も昔も人の欲求は同じなのだなあ、と感心してしまう。みなブランド品に転ぶのだ。人間だからこその性(さが)なのだろうか…。

なお、この機会に源氏物語の世界に深入りしたい、という方には、河添が執筆した『源氏物語と東アジア世界』(NHKブックス1098)がお薦めだ。なお、こちらを読み解くにはある程度の予備知識があることが望ましい。

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