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2007年04月25日

『旭山動物園園長が語る命のメッセージ』小菅正夫(竹書房)

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車を運転中、ラジオから流れてきた物語に思わず耳を奪われた。本の朗読だった。「僕」が子供の頃、毎日を自然の中で過ごし、いろいろな昆虫や小動物を見つけては育てた思い出が語られる。命を慈しみ、大切に育てた気持ちが痛いほど感じられる、すてきな内容だった。話なかばにして目的地に到着したが、どうしてもスイッチを切る気になれず、とうとう番組の最後まで聞いてしまった。

私はいま東京の都心に住んでいる。生まれて以来の安住の地だ。安住、とは言っても隣接する大通りには日夜数え切れないほどの車が往来し、近隣の建物も鉄筋のマンションなど人工的な建造物ばかりとなった。土はほとんど見えない。しかし私が生まれ育ったウン十年前には、ここにもあふれんばかりの自然が存在していた。西岸良平の『三丁目の夕日』ばりの風景そのままと言って良く、夜空には天の川が見えたし、周囲が暗くなるにつれ、窓から漏れる光を求めてたくさんの昆虫が集まってきたものだ。

そんな記憶をよみがえらせ、生命の大切さを切々と訴えてやまない物語は、北海道の旭川市にある旭川動物園の園長、小菅正夫の語りがまとめられた本に収録されているものだった。「ペットは死んで初めて命の大切さを教えてくれるのです。子供は、生きているときに一緒に遊んだ楽しさだけではなく、死んだときの悲しみを味わうことによって、生きている意味を理解するのです(本書62頁)」という言葉が胸をうつ。「ペットは死ぬのがあまりに悲しいので飼わない」という親が少なくないが、愛する存在を失い、泣きじゃくっても何をしても二度と戻らない、どうしようもないほどの悲しさを経験しないと、「命を大切にしよう」という言葉も単なる標語に終わってしまいかねない──そう小菅は主張する。

「失敗してもリセットすれば良い」「リセットすれば生き返る」と本当に信じている子供もいると聞く。昨今の日本はおかしい。あまりに殺伐としている。なぜこれほどたくさんの殺人事件が連日報道されなければならないのだろう。交通事故で亡くなるよりはるかに多くの人々が自殺している、という状況のままで良いのだろうか。せめてこの本を読んで、命の尊さにあらためて思いを馳せてみたい。数多くのカラー写真も美しい。お父さんが読み、お母さんも読み、そして子供にもプレゼントしてあげたい一冊だ。

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