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2005年04月27日

『大作曲家 シューベルト』(音楽之友社)

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引っ込み思案で女性にもてず、人づき合いが下手で友人のサークルの中でしか音楽活動をできなかった“偉大なるアマチュア”という先入観がもたれ勝ちなシューベルトだが、これは大いなる誤解である。シューベルトは同時代を生きた楽聖ベートーヴェンに勝るとも劣らない有名人だったという。

シューベルト研究は地味な研究だ。成果が上がりにくい。原因は資料の少なさにある。モーツァルトやベートーヴェンなら資料の量にも恵まれ、研究のしがいがある。シューベルトの場合は「こうだったのではないか」という仮説は立てられても、それを証明できるだけの資料が得られないのだ。仮説は単なる推測に終わり、学問として前に進めない。

そのようなシューベルト研究の現状の中で、もっとも先端の情報を確かな論拠とともに提供してくれるのがこの本である。原著はロロロ叢書という新書版の本だが、それだけに読者の対象は学者だけに限られず、一般の音楽ファンにもわかりやすい内容になっている。他のシューベルトの本には掲載されていない図表も多く、それだけでも手もとに置いておくと楽しいコンパクトな本である。

それまでの音楽の集大成を成就したベートーヴェン(1827年没)と、その後の音楽表現への一歩を踏み出したシューベルト(1828年没)が同じ街に住んでいた、というのは感慨深いめぐり合わせではないだろうか。

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2005年04月13日

『ベートーヴェン“不滅の恋人”の謎を解く』
(講談社現代新書1538)

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ベートーヴェンというと「苦悩の英雄」というレッテルとともに、眉間にしわがよった、あの顔が思い浮かぶ。確かに“音楽家なのに耳が聞こえなかった”というのは苦悩に違いないが、毎日が苦悩だけで満たされていたはずはない。

ベートーヴェンは女性にもてたのだ。相手は自分より上の階級、つまり貴族の女性ばかりである。特筆すべきはこれらの女性側から「実は私はベートーヴェンとつき合っていたことがあるの」という暴露話がただひとつとして漏れ聞こえてこないことだ。男冥利につきる話である。つきあい方(というか、別れ方?)にコツがあったのだろうか。

そんな数多い女性の中で誰が本命だったのかを解き明かそうとしたのが本著である。筆者の青木やよひは音楽学者ではないが、ジャーナリストとしての視点と緻密さをもって、当時の状況をひもといていく。推理小説を読むようなスリリングな展開があり、読者を飽きさせない。

ベートーヴェンの不滅の恋人が誰であるか、ということに関しては諸説あり、いまだに最終的な回答が出たわけではない。青木が構築する論理には思わずうなずいてしまいそうになるが、これに対する反論も存在する。それでも読んでいておもしろい。新書版という手頃なサイズでもあり、気軽に読める一冊だろう。

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