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2007年06月29日

『VOL 02』(以文社)

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「格差」の話に飽きた人のために

この1週間で2日しか仕事がないー。
トホホな話だが、こんなイントロで書評を始める人など、このサイトにはいないでしょう。
本当に飽き飽きしてしまったのだ、思想の話でも音楽の話でも、なにかこう「大学教授」的な抽象空間や「前衛-大衆音楽」的なマニア空間でゴソゴソ言うのが。学生と非常勤講師で大学を2度追い出されたようなもんだし、CDショップにもここ3カ月行ってない。それでもドゥルーズやキップ・ハンラハンや大友良英が面白ければ、フリーター稼業の合間を縫って読みまくり、聴きまくり、ついでに病気も騙し騙しでなんとか書く。

この喰って寝て働いて、また喰って寝て書いて生殖して、怒りながら働いて、またまた喰って副作用に怯えながら働いて、寝る。こういうリアリティの中で考え抜くことが「肝」だとますます思うようになった。当たり前だけど。そして肝心の肝臓が悪くて酒飲めないんだけど。そうでなければ、この「透明な牢獄」を抜け出せないだろう。でもそれは、SPA!や「2ちゃんねる」や東浩紀的ポストモダンやらの心理主義的な棺桶に入ることではない。ナショナリズムのでっかい墓穴に入ることでもない。

この1週間で2日しか仕事がない。
でもー、いやだからこそ「格差」の話にはウンザリした。なぜなら、俺たちは「仕事」がしたいわけじゃない。「労働」がしたいわけじゃない。「会社」に入りたいわけじゃない。そんなものはみんな、結局「奴隷」になることだからだ。金も……いやいや欲しいよ、金はねー。とりあえずそれがないと、食う物も寝る所もなくなるから。だから一番腹が立つCMは、あるメガバンク系カード会社のものだ。「お金で買えないものがある。だから買えるものは〜カードで」。これはプレミアム・カードを持てる人たちの話だろう。ネオリベ的傲慢さが実によく出てる。その舞台にマンハッタンのジャズクラブ・ブルー・ノートが使われている。キップや大友くんがジャズへの愛憎で爆発しそうになる気持ちがよく分かる。

「労働と賃金の相関を切断する」と、1年経ってようやく出た「VOL」誌の第2号「ベーシック・インカム」特集は言う。「生きてることに賃金を!」という、生存のための基本所得へ向けて世界中で行われている運動や思想的ディスカッションが紹介される。「運動に賃金を!」という、この国では信じられなくて涙が出そうな要求が力を持つラテン・アメリカの現状も伝えられる。10代から70代まで「隠れフリーター」がますます増え、街中に溢れているからこそ、ギャラも下がり、仕事も減る。それでも、死にたくないし、奴隷にもなりたくない。そのどちらでもない道があるのだ、と「VOL」誌は言う。

たった今、ようやく明日の仕事が入った。中央線沿線のさる広告代理店へ13時から1人お邪魔する。結局のところ、消費者としての自分自身の首を絞めるようなその媒体制作の仕事に、心底から面白いと思っている人間など、この職場には1人もいない。憐れなネオリベ奴隷たち。そして、さらに下級奴隷としての私。ゴクロウサン。私は日本人たちが集まるブルー・ノートになど行きたくない。つい2カ月前に、地上げ的ジェントリフィケーションで潰されてしまったロウアー・イーストサイドのTONICに行ってみたかった。


『VOL 01』
特集1:政治とはなにか
特集2:アヴァン・ガーデニング
編集委員:
萱野稔人、高祖岩三郎、酒井隆史、渋谷望、田崎英明、平沢剛、松本潤一郎、松本麻里、矢部史郎

『VOL 02』
特集1:ベーシック、インカム-ポスト福祉国家における労働と保障
特集2:ドゥルーズ『シネマ』
編集委員:
萱野稔人、高祖岩三郎、酒井隆史、渋谷望、白石嘉治、田崎英明、平沢剛、松本潤一郎、松本麻里、矢部史郎、デヴィッド・クレーバー、ジム・フレミング