« 『入門 国境学-領土、主権、イデオロギー』岩下明裕(中公新書) | メイン | 『「米中対峙」時代のASEAN-共同体への深化と対外関与の拡大』黒柳米司編著(明石書店) »

2016年12月20日

『日本人の国際移動と太平洋世界-日系移民の近現代史』米山裕・河原典史編著(文理閣)

日本人の国際移動と太平洋世界-日系移民の近現代史 →紀伊國屋ウェブストアで購入

 本書は、共同研究「日本人の国際移動に関する学際的研究」(立命館大学国際言語文化研究所プロジェクト)の成果をまとめたもので、『日系人の経験と国際移動-在外日本人・移民の近現代史』(米山裕・河原典史編、人文書院、2007年)の続編である。

 「序 日本人の国際移動と太平洋世界の形成-「大西洋史」の成果を踏まえて-」では、「分断された移殖民研究の変容」で「移動・移民体験に関する既存の研究方法・視角を概観し、特徴と問題点を指摘する」。ついで「移動の「場」に着目する」で「大西洋史の研究成果を概観したうえで太平洋史の問題点と可能性について検討する。そして、太平洋史を構築するうえでアジア人の移動の持つ意味について考える」。

 本書は、3部全11章からなる。第1部「研究の理論と枠組み」は2章からなり、まず「海外における最新の研究成果を整理し、おもにアメリカにおける日本人の国際移動研究の潮流と課題を提示する」。「序では十分に説明できなかった」「日本人以外の移民史」についても詳述している。つぎに、「アメリカ・ロサンゼルスにおいて農業だけでなく、やがて日本人は商業活動にまで進展する様子について」、「歴史社会学から読み解く」。

 第2部「国際政治の動向と日本人移民」は3章からなり、「太平洋世界において活躍した日本人(日系人)をめぐる国際政治の諸相が説かれている」。まず「大西洋史とは異なる移民史を築くに至った環太平洋地域への日本人移民について、おもに契約移民会社が果たした役割について」説明し、つぎに「日本の外地であった「南洋」へ展開する日本人について、いわゆる「知識人」の思想をひも解く」、そして「ハワイからの転航によってバンクーバーに起こった日本人排斥事例」を再考している。第3部「北米大陸と太平洋島嶼部における移動と生業」は6章からなり、「これまで移民史研究で看過されて」きた「太平洋諸島をめぐる日本人の活動も収め」ている。

 そして、「序」は、つぎのような課題を述べて締めくくっている。「太平洋世界の形成に果たした重要度からすれば、日本人の国際移動の果たした役割は、中国人に次ぐ副次的なものだったといわざるを得ない。しかし、それこそが一国史的な見方であって、アジアの各地から次々と送り出される代替可能な労働力の流れが太平洋世界を作り出したのである。今後の環太平洋地域の国際移動研究は、在外中国人、インド人の専門家との共同作業を踏まえて、全体像の構築を進めることが必要なのである」。

 本書は、2004年度からいくつもの研究助成金を得て進めてきた共同研究「国際移動研究会」の成果の一部であり、すでにいろいろな機会に発表されてきたものである。本書に収録され1章となった論文の初出をみると、古いものは1995年で多くは2010年前後である。本書は、「諸般の事情によって前書に収録できなかった論文や、その後の発表をまとめた「国際移動研究会」の研究成果の第二段になる」。そして、2013年度から5年間の予定で科学研究費基盤研究(A) 「環太平洋における在外日本人の移動と生業」(代表 米山裕)が採択され、共同研究の再出発のために出版された。序の最後で指摘された課題「環太平洋地域の国際移動研究は、在外中国人、インド人の専門家との共同作業を踏まえて、全体像の構築を進めることが必要なのである」に立ち向かうためには、これまでとは次元の違う取り組みが必要となる。

 「大西洋史」研究に匹敵する成果を出すためには、まず大西洋と太平洋の違いを理解しなければならないだろう。現在、太平洋諸島諸国メラネシアには4つの国、ポリネシアには5つの国と地域、メラネシアには5つの国があり、約700万人の人びとが暮らす。これらの人びとにとって、「太平洋史」研究とはどういう意義があるのか、そこから出発するには多くの難題があるが、着実に一歩一歩踏みしめてやっていくしかないだろう。

→紀伊國屋ウェブストアで購入

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://booklog.kinokuniya.co.jp/mt-tb.cgi/5876