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2016年11月22日

『沖縄の神社』加治順人(ひるぎ社)

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 「沖縄の神社」とは、なにを指すのだろう。だれがなにを目的に建てたのだろう。そんな基本的なことも知らないで、沖縄のことは考えられない。

 本書の概要は、表紙見返しにある。「沖縄の神社は、身近な存在でありながら、発祥の由来や役割については案外知られていない。著者は伝統的な信仰についても造詣が深く、本書では、神職としての経験と研究者の視点から、沖縄の神社の歴史を分かり易く述べている」。「沖縄の神社の神は、ほとんど熊野三神であるが、神社発祥の由来と歴史について考えると同時に、御嶽信仰との関わりについても解明している。本書によって、沖縄の神社に対する理解が深まり、研究が進展することを願っている」。

 著者、加治順人は「沖縄にも神社、お宮と呼ばれる場所が存在し、正月などには多くの人々が参拝に訪れている。だが、それら沖縄にある神社と本土の神社とを比べると、何か違う雰囲気がある」。「それは神社だけでなく、一般に生活様式、慣習、風俗、信仰等においても同様なことがいえ、沖縄と本土には、今なお何か隔たりのようなものがあるように感じられる」と述べ、本書の目的をつぎのように記している。「本書は、本土から新しく入ってきた「神社」にテーマをしぼり、歴史的、文化的に本土とは異なる社会環境のなかで、神社という新しい信仰が、どのようにして受容され、どのように展開し現在の姿へとなっていったのかを明らかにすることを主眼に記述したものである」。「そして沖縄の神社の変遷をたどることによって、現在の沖縄が何を失って、なにを得てきたのかを探り、今後の沖縄の進むべき方向性の一環を考えていきたい」。

 琉球王朝時代の「神社は自然発生的に起こった」が、明治12年(1879年)「琉球処分」後、「神社を取り巻く環境は一変した」。「いわゆる国家神道の時代」になった。とりわけ徴兵制導入後の変化について、つぎのように説明している。「旧慣温存措置により実施されていなかった徴兵制度が本土から二五年遅れて(明治三一年より実施)施行されることとなり、県内からも日露戦争へ三、八六〇名が召集され、その内二〇五名が戦死、一四九名が負傷した」。「それらの戦死者を祀る為の招魂祭が県内各地で行なわれ、それぞれの地域でその地域出身の戦没者が祀られるようになっていった」。「県主催の招魂祭は、毎年秋に奥武山公園の広場(現在の護国神社裏手)で行なわれ神式と仏式とに分けて祭典が行なわれていた。また各市町村では、大正の始め頃から昭和初期にかけて、戦没者の慰霊のために建立された忠魂碑の前で毎年秋に祭典が執り行われ、そこで日清、日露戦争を始めとする種々の戦争で戦死及び戦病死した地元出身の戦没者が祀られた」。

 そのようななか、県は1936年に沖縄県招魂社を創建し、39年に内務省令で全国にある招魂社を護国神社と改称することとなったため沖縄県護国神社となった。そして、戦況の悪化にともない「戦没者の慰霊」から出征軍人の「必勝祈願」「武運長久」の場へと変わっていった。県が「国家神道」の観点から、本土主導で神社を整備していったのは当然の成りゆきであろうが、問題は地域の信仰とのかかわりであろう。それについて、つぎのように述べている。「その流れは地域の信仰の篤い普天間宮をはじめ、他の旧琉球八社や古来から信仰されてきた御嶽にも及び、武運長久を祈る姿が散見されるようになり、御嶽の前にも鳥居が建てられるようになっていった。このように当時の沖縄の神社は「本土の象徴」としての機能が強化されていったものと考えられる」。「昭和一九年御嶽が正規の神社に認定され、県町村に神社を一社建立することが決定されたが、戦況が逼迫し沖縄戦が始まったため計画が立ち消えとなった」。

 戦後、「護国神社は、戦没者慰霊という観点からその復興に対し県内外からの関心も高く、早期の復興が望まれ、これも全県的な募金により再建がなされている」。気になったのは、「近年御嶽を改修する際に神社様式の社殿が建立される事例も報告されており、御嶽・拝所の神社化という傾向が観られる」ことである。「現在の沖縄が何を失って、なにを得てきたのか」、「御嶽の神社化」からもすこしわかるような気がする。日本が植民地化したり占領したりした朝鮮、台湾、樺太、南洋群島、中国、シンガポールなどで建立した神社は、戦後悉く破壊された。御嶽の前に立てられた鳥居は、ひとつも壊されなかったのであろうか。現在でも、御嶽の前で熱心に祈る人びとの姿を見ることがある。その人びとにとって、鳥居はどういう位置づけなのだろうか。知りたくなった。

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