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2015年05月05日

『シンガポール戦跡ガイド-「昭南島」を知っていますか?』小西誠(社会批評社)

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 著者小西誠は、「著者略歴」によると、「1949年、宮崎県生まれ。航空自衛隊生徒隊第10期生。軍事ジャーナリスト」で、『自衛隊の対テロ作戦』『ネコでもわかる?有事法制』などの時事問題のほか、『サイパン&テニアン戦跡完全ガイド』『グアム戦跡完全ガイド』など戦跡ガイドの著書がある。

 本書は、「シンガポールに残されているアジア・太平洋戦争の戦跡について、同国の戦争記念碑を参考にしながら、筆者の調査・認識をも加えて整理・紹介したものである」。本書の背景として、韓国・中国政府とだけでなく、「アジア・太平洋戦争下において日本軍の侵攻・占領下に置かれ、南京大虐殺に匹敵する住民虐殺(大検証・粛清)に遭ったシンガポール」とも、「日本政府との「歴史認識問題」も厳として存在している」ことがある。

 著者は、こういう状況のなかでの不幸をつぎのように述べ、本書の目的としている。「毎年100万人に近い日本の青年たちがシンガポールを訪れ、また、シンガポール在住の日本人も、およそ2万6千人を超えるほどの経済的繋がりがありながら、この国を訪れる(あるいは在住の)日本人たちが、かつて日本軍がこのシンガポールで何を行ったかをまったく知らないことだ。これでは、本当の意味での経済的・文化的交流が存在しないばかりか、真の友人にはなれないだろう」。「シンガポール政府は、戦後50年にあたる1995年、国内の11カ所に、日本軍の戦争と占領の記念碑を構築、あるいは、この戦争の傷跡を残すために、戦跡を同国の文化遺産として登録している」。「戦争記念碑は、たえず再発掘・再発見されるばかりか、現在もなお政府によって新しく建てられつつある。戦争の記憶を更新し、その礎の上に強固な平和を構築するという決意を感じる」。それにたいして「現在の日本では、戦後69年という長い歳月が経つにつれ、体験として戦争を知る世代が次第に失われつつある。それに伴って、戦争を賛美する「戦争を知らない政治家たち」が、国会を中心に増殖しつつある」。

 「本書では、シンガポール政府の指定する「第2次世界大戦跡地」(11カ所)、「国指定史跡」(39カ所)などの他、筆者が独自に調査したものを紹介している」。この50カ所の意味を知ることも大切だろう。また、著者は、大虐殺の責任者が戦犯を免れたことにこだわり、本書をつぎの文章で終えている。「大虐殺の実行責任者・辻政信が、GHQの妨害の中で逃亡し、戦犯を免れたことは、戦犯裁判の不徹底性はもとより、戦後の米軍支配下の占領政策の、重要な問題性を突きつけている」。

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