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2013年08月20日

『はじめて学ぶ日本外交史』酒井一臣(昭和堂)

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 本書を読むキーワードは、「文明国標準」と「社会外交史」である。著者、酒井一臣は、「序 外交史をまなぶ【「今」を理解するために】」で、それぞれの見出しの下に、つぎのように説明している。

 「文明国標準」:「19世紀には、西欧地域の優位が決定的になり、西洋文明こそが「正しい」人類の発展経路であり、西洋人=白人がほかの人種より優れているという認識が定着していった。西欧諸国は、西洋文明をうみだした自分たちを「文明国」とし、西洋文明に適応できない地域を遅れた「未開国」とみなした。その際、文明国と未開国を区別する基準となったのが、「文明国標準」(the standard of Civilization)だった。これは、法律・社会・経済制度にくわえ、制度の背景にある価値観・宗教、はては生活様式にいたるまで、西洋文明国の基準で文明化の度合いを判別する考え方である」。

 「社会外交史」:「現在の日本はもちろん、世界中のどこの人びとも、ヒト・モノ・カネのグローバルな動きに関わっている。つまり、外交官や貿易業者でなくとも、わたしたちは世界の動きに影響をうけているのである。よって、外交や国際関係の視点から、社会の変動や人びとの思考様式を考察することが重要になる。外交や国際関係から日本社会のありかたを考えること。これを私は「社会外交史」と呼びたい。外交史というと、条約の難解な解釈論、もしくは戦争の歴史と思われるかもしれないが、身近なできごとも外交史の延長線上にある。この本は、日本の明治から現代までの社会外交史を45の項目にわけて考察する。それは、決して遠い時代の別の世界のことではなく、今につながるドラマなのだ」。

 本書は、著者の2年間の高校常勤講師の2つの経験から生まれた。ひとつは、授業からつぎのことを考えた。「高校の授業と大学の授業は、位置づけも意義も違う。それでも、現在の大学の学習と高校の学習は違いすぎるのではないか。多くの大学生は、研究者になるわけではない。それなのに、大学では研究者の世界の論理が優先される傾向にある。もちろん、専門的で高度な内容の授業も必要だ。しかし、入門段階は、もっと簡単にしなければならないのではないか」。

 もうひとつは、高校教師の生活から考えたことである。「高校の先生は、大学のように研究する時間が与えられるわけではない。また、歴史に興味がある多くの方も、ゆっくり研究書を読む時間はない。でも、研究者は難解な専門用語を使い、注がたくさんついた論文や本で情報を提供しようとする。自分自身も高校の教員をしていて、「そんな難しい本をのんびり読む時間はない!」と叫びたくなる」。「日本をとりまく国際情勢は厳しさを増しています。また、日本人の歴史認識の問題が深刻な外交問題を引きおこしています。近現代の日本外交史に関心を持つ方が増えているのではないでしょうか。「忙しい方々に、ちょっとした時間の合間に、簡単に読んでもらえる本を書いてみたい」」。

 そんな2つの「想い」から生まれた本書は、「1エピソード4頁構成」で読みやすく、エピソード毎に基本的な語句解説と「さらに学びたい人のために」参考文献を1冊だけ付し、巻末には「各国の経済力の変遷」「戦後日本経済表」「日本の領土地図」「内閣総理大臣および外務大臣一覧表」、「もっと学びたい人のために」参考文献3頁がある。エピソードの頁の下には、年表軸も付されている。

 エピソードの内容も、高校の教科書で書かれていることを念頭に置いて書かれているのでわかりやすく、田口卯吉の「日本人白人論」などの意表を突くものもあれば、「軍の暴走を許した国民意識の暴走」など、国民の責任を問うものもありで、読者に外交が自分たちの生活と無縁ではないことを意識させている。

 一般書を書くのは、ある意味で専門書を書くより難しい。本書のエピソードで疑問にもった箇所があり、自分ならこう書くと思った読者がいたら、著者の目的は達成されたことになるだろう。本書は、書かれたことを鵜呑みにする「学ぶ」ための「教科書」ではない。副題にある「「今」を理解するために」、「序」にある「まなぶ」から自分にとっての「外交史」を考えるためのものだろう。

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