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2011年07月05日

『アメリカの影のもとで-日本とフィリピン』藤原帰一・永野善子編著(法政大学出版局)

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 本書は、研究プロジェクト「アメリカの影の下で-日比両国における対米認識と社会形成の比較研究」の成果として提出された英文論文から選んで、翻訳したものからなる。このプロジェクトは、2006年に開催された「第一回国際フィリピン研究会議アジア地区日本大会」の全体会といくつかの分科会を組織するために立案された。

 この研究プロジェクトのねらいを、編著者は「あとがき」で、つぎのように述べている。「従来、まったく異なる歴史的過程を歩んできたと考えられてきた日本とフィリピンであるが、アメリカを光源としてこの二つの国を並列すると違いだけではなくむしろ共通点が見いだせるのではないか、そうだとしたら、「日比関係」という枠組みを超えた日本とフィリピンのつながりだけでなく、両国を新しい視座のなかで比較する方法を模索できるのではないか、ということにあった」。

 また、編著者の1人、藤原帰一は、「序章 二つの帝国の物語-後発植民地主義としての日本とアメリカ」を、つぎのように結んでいる。「アメリカの直接的支配のもとにおかれたフィリピンと日本というこの二つの国に、それは何を遺産として残したのだろうか。ここに私たちの研究課題がある。第二次世界大戦後において、アメリカと日本を帝国として比較することは無意味となった。探求すべき残された課題とは、ともにアメリカが創造し維持してきた進歩的で非公式な帝国の影のもとにおかれた、フィリピンと日本の比較であろう」。

 近現代フィリピン政治史は、アメリカとの関係を基軸に書かれてきた。いっぽう、戦後日本外交史もまた、アメリカとの関係を基軸に書かれてきた。ともに多くの研究があり、それぞれ政治・外交史を超えて、文化などあらゆる分野でアメリカの影がつきまとったことを明らかにしてきた。本書の基となったプロジェクトは、日本とフィリピンとの関係性を「アメリカ」という第三者の存在を視野に入れながら従来の研究を参考に分析し、それぞれ異なったかたちで異種混淆(ハイブリツド)した実態を明らかにすることによって、日比関係だけでなく比米関係、日米関係をも見直そうとしている。それは、大胆な挑戦以外のなにものでもなく、それは以下にあげる3部8章のそれぞれのタイトルからもわかる。そして、その挑戦が成功すれば、その後の朝鮮戦争後の韓国など、アメリカが深く関わることになる国や地域の「超大国アメリカの影」を理解する一助となる。

  第Ⅰ部 帝国と国民国家のせめぎあい
 第1章 フィリピンと合衆国の帝国意識
 第2章 戦後日本とフィリピンのエリートの継続性-アメリカの影響
  第Ⅱ部 錯綜するイメージ-国民国家・ナショナリズム・戦争
 第3章 日本との戦争、アメリカとの戦争-友と敵をめぐるフィリピン史の政争
 第4章 二つの戦後六〇年-比米戦争と第二次世界大戦の記憶と哀悼
 第5章 象徴天皇制とホセ・リサールの神格化との比較考察
  第Ⅲ部 三つの主体の出会い-アメリカ・日本・フィリピン
 第6章 対抗する陰影 <日本>と<アメリカ>-フィリピン系アメリカ人の想像のなかで
 第7章 権力の三重奏-フィリピン人、日本人、植民地権力の場所
 第8章 アメリカの磁場のなかの自己形成-山口百恵と小泉元首相をとおしてみるヨコスカと戦後日本のねじれ

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