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2009年01月20日

『東南アジア経済史-不均一発展国家群の経済統合』桐山昇(有斐閣)

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 アジアの経済発展が、欧米の先進国に追随したものではないことが明らかになり、その経済発展の原動力を、歴史や文化に求めるようになってきた(ようやく!)。本書の目次を見てもそのことがわかる。

  第1章 東南アジアの現在
  第2章 東南アジアという地域世界
  第3章 支配からの離脱
  第4章 「国民経済」の追求
  第5章 脱植民地経済希求の転回点
  第6章 開発戦略の発見
  第7章 ASEAN経済の形成
  第8章 産業社会の確立とFTA

 帯に「現代東南アジア経済を読み直す」と大書してあり、その下につぎような本書の要約ある。「めざましい経済発展と地域統合の進展で注目を集める東南アジア。旧宗主国の史料解読や系統的な現地聞取り調査から、日本の企業活動とも関連深く、新たな国際分業体系を作り上げるなかで産業社会化が進むこの地域の経済発展を跡づけ、現段階をリアルに把握し、今後の方向を提示する」。

 著者、桐山昇は、「この地域の商業・経済活動がもつ歴史的属性への回帰の道」に注目し、「植民地時代はもとより前近代世界においても、域内各経済単位(たとえば港市)は連接する商業・経済活動の環であった。この地域にあって、地域国際分業体系こそが普遍的姿であったといってよいであろう」と、東南アジアの地域性を押さえてから、時系列的に地域経済を語っている。そして、東南アジア各国に目配りしながら、その時代を特徴付ける国を事例として丁寧に説明をしている。

 本書が、安心してアジア経済を学ぶ学生に、テキストとして紹介できる内容になっているのは、著者が教育大学出身で、これまでも『東南アジアの歴史』(共著、有斐閣、2003年)などのテキストを執筆した経験があるからだろう。また、「対象とした全事業所(現場)に直接出向くこと、製造業であれば面接に加えて製造ライン見学を旨とするヒアリング手法を基礎としている」のは、机上の動向分析が、「現場」で役に立たないことを知っているからだろう。「在外企業ヒアリングで訪ねた国は、ASEAN諸国を中心に関係国合計14ヵ国に及び、訪問した事業所数も160を超えるに至った」という。「東南アジアであるから労働コストが圧縮できる」と考えている日本の東南アジア進出企業があるなら、その企業の東南アジアでの未来はない。東南アジア社会はすでに成熟して、「3K職場を嫌う」ようになっている。東南アジア社会の発展のなかに日本企業を位置づけるビジョンがなければ、いずれ東南アジアから排除されることになるだろう。

 文献で歴史や社会を理解し、現場で現実を把握して、その現実を歴史や社会のなかで理解する。そのことが、読者に充分伝われば、「アジア経済を学ぶ学生はもとより、現地赴任もしくは現地体験をもつ企業人に、その体験を整理し、体系化する一助」となることは、間違いない。

 ところで、「3K職場を嫌う」ようになってきていることはわかるが、依然として産業廃棄物の取り扱いやリサイクルのための危険な作業が東南アジアや南アジアでおこなわれていることは事実だ。経済環境の悪化によって、このような危険な労働が、さらに過酷な状況にならないことを祈る。日本でも、わたしが通勤途中で見るアルミ缶の購入価格は、この数ヶ月で1キロあたり155円から85円に下がり、いまは55円になっている。空き缶収集日に早朝から集める人がいてうるさいと思ったこともあったが、これらの人びとはこれまでの2倍も3倍も集めなければ、これまでの収入が得られなくなっている。金融危機のしわ寄せは、このような人びとや経済的に弱い立場の国ぐにに集中する。セイフティネットの機能を充分に働かせなければ、国内的にも国際的にも社会はどんどん悪い方向に向かってしまう。

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