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2008年09月24日

『阪急電車』有川 浩(幻冬舎)

阪急電車 →bookwebで購入

「やられた〜
 週末の午後を一気に読ませる
 池上線でも大井町線でもなく」


ロンドンでは季節によらず、行くたび毎にロールスロイスをよく見かける。人がよく見かけると感じるのは、車の総数の何%以上がロールスロイスだからだという報告が昔あったが、それが思った以上に多いか少ないかという話で、その具体的な数字は忘れてしまった。

東京では季節にもよるが、月に1回か3ヶ月に2回位の割合で、駅の構内で黙って向かい合う若いカップルをよく見かける。どっちかが相方とはまた違うぶっきらぼうな顔をしていることが多く、明らかに立場的にバランスを崩している。それも改札口付近であることが多いが2人は多くの人が行きかうことも気にせず、時に人ごみのド真ん中で、特に渋谷の夜はその2人をよけて流れを作る。すると突然、喧騒の音が聞こえなくなり、カメラを引いて、小田和正さん系とも違い、月9系とかとも違う23時系の曲が流れる。そしてタイトルクレジット。

仕事柄、始発やその時間帯の電車によく乗るが、駅前や車内は、徹夜で遊んだか、それなりの仕事の人達の帰宅と通勤の風景が入れ子になる。勿論、座れることは座れるのだが、これは季節によらず「向かいにはどこへ行く途中なのか帰る途中なのか、しっかり手を繋ぎ合った若いカップルが爆睡中」をよく見かける。これだけでカメラアングルを考えれば何か撮れるなと思っていたら、この有川さんの「あとがき」にモロ書いてあった。

やられた〜
これが正直な感想、全く勝負になっていませんが
「誰がじゃ、何がじゃ」と寛平ちゃんがつっこむ

それから文体
ライトノベルに徹した書き方が一気に読ませる
実はこれもジャケ買いだったのですが、それも有川さんの文章を読んだのは初めてだったのですが(すみません)最後に「あとがき」を読んで、本文の端々(はしはし)に見え隠れする「あとがき文体」の寸止めが、落ちを期待させるくすぐり薬(いわゆるハナ薬)になっていて、もう週末の午後はこれで行こうと思わせて、ねそべって一気に読ませる

前にどこかに書きましたが、私は横光利一の「蠅」が好きで、例によって、受験勉強の国語の問題集で感動した系ですが、それぞれの乗客を適宜詳細に描いて最後にドン、という話ですが、阪急電車の「往路」からすると一瞬その手の最後もありかなと思ったのですが、このご時世、電車が「蠅」の結末になったら洒落にならない。その辺は「復路」で、私、見た目より真面目系なんだからと、私待つわのアミン系の読者(でもないが)の共感と安心感を呼ぶ。
「蠅」と違うのは、最初から非常に3次元的で、立体的なカメラアングルを彷彿させる。「蠅」はというと、最後だけ、それも突然椅子が引かれた感じのインパクトはあるが、このご時世、何するのとにらまれそう。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000168/files/2302_13371.html

あるあると言われることを書くからには、何かしらの技量のある装飾が必要で、その辺りをさらりと関西的に、そういう意味では関東でも少しはインタラクティブ系かもしれない池上線でも大井町線でもなく、やはり阪急電車だったのかと脱帽です。

わたしまけましたわ



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