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2005年03月07日

『ゾウの時間 ネズミの時間-サイズの生物学』(中央公論社)

ゾウの時間 ネズミの時間 →bookwebで購入

「アインシュタインとディーンマーチン」

 本書のタイトルからするとどちらの系統の本なのか判断しにくいのですが、 要は生物学の学術的な研究内容を文系的に表現したという、動物学者が時間と いうスケールを通じて、個々の人生のそれぞれの世界観や価値観を解析したと いう、生物系統の学会でも取り上げられつつ理系以外の人にも受け入れられた ベストセラーです。 ゾウでもネズミでも人間でも、一生の間の心臓の心拍総数はほぼ同じ、とい う観点から、どんな動物でも、いわゆる寿命に違いはあれ、一生として感じる時間の長さは同じなのではないかという「心拍数一定の法則」から話は展開し ます。短命の動物は心拍数も早く、長生きの動物は動きまでゆっくりしている としても、一生を生き抜く感覚は同じ長さではないか、という、流れる時間の スピードが、それぞれの状態で異なるとする、もしかするとアインシュタイン のように非常に宇宙の根源の定理を指摘しているのかもしれません。

 著者は、琉球大学在職中に本書を書き上げていて、かつて琉球大学の教官公 募で「大都市から離れた沖縄という環境を理解し、ゆっくりと時間をかけて研 究を行いたい研究者」云々と書かれた公告を思い出します。同著者は、授業の 最後に自作の歌を歌うことでも有名で、本誌の付録にも「一生のうた」を披露 していますが、何ともその独特の世界観が嬉しくもあります。

 アインシュタインは「美女を前にするとドキドキして時間が経つのが早く感 じるでしょう?でもつまらないことだと時間が長く感じる、それが相対論だ」 というようなニュアンスで彼の研究を説明していました。本書は、そんな相対 論と人生の価値観を科学的に分析したものとも言えます。

 またかつて、お酒とタバコの好きなディーンマーチンは同僚(多分ジュリー ルイス?)から「お前、そんなに不摂生だと寿命縮めるぞ」と言われ、「何言 ってんだ、俺は毎晩、充分人生をエンジョイして長く感じているぜ」と言った そうで、そんなアインシュタインとディーンマーチンを思い浮かべさせる名著 です。

 ちなみにディーンマーチンといえば石原軍団ならぬシナトラ一家でも有名で すが、「オーシャンと11人の仲間」とは彼の作品です。沖縄というオーシャ ンを得た著者は、多分、都会にいるよりゆっくりとした時間の流れの中で、研 究をエンジョイして本書を仕上げたのだと思います。我々が海を見て思う気持 ちは、波のリズムがDNAに刻まれた原始的なリズム感への望郷を呼び起こす、
とは私の勝手な解釈ですが。

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