書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

カス・ミュデ、クリストバル・ロビラ・カルトワッセル『ポピュリズム』(白水社)

Theme 1 他者とともに生きる www.kinokuniya.co.jp ポピュリズムは、需要と供給があるときに初めて力をもつ。この本で強く心に響いた箇所だ。ポピュリストという「供給者」がいるからポピュリズムが蔓延する。そう思い込んでいた。じつは「需要」すなわち人…

ウィリアム・マッカスキル『〈効果的な利他主義〉宣言!』(みすず書房)

Theme 1 他者とともに生きる www.kinokuniya.co.jp 私たちはいま「効果的」という言葉にとても敏感だ。この予防法は、この支援活動は、この政策はほんとうに効果的なのか、という疑いをたえず抱えながら、世界各国の対応から身近な行政の一挙手一投足にまで…

阿部公彦『小説的思考のススメ』(東京大学出版会)

Theme 11 たくらみを読み解く www.kinokuniya.co.jp 小説が読めない人が増えているという。本書の冒頭で著者自身が日本文学に対して近づきがたい臭気を感じていて、小説が読めない一人だと告白している。著者は日本文学の専門家ではない。「『いちいち説明し…

デイヴィッド・ロッジ『小説の技巧』(白水社)

Theme 11 たくらみを読み解く www.kinokuniya.co.jp この本のカバーにはゴッホの「小説を読む人」が使われている。書斎で本に見入っている女性の像なのだが、これは本書の考え方を象徴している。すなわち小説家というのは、ゴッホの作品に描き出されているよ…

デイヴィッド・ヒーリー『ファルマゲドン』(みすず書房)

Theme 10 健やかに蝕まれて www.kinokuniya.co.jp かつてEBM(エビデンスに基づく医療)を提唱する医学雑誌の編集・制作に携わっていたことがあった。ざっくり言ってしまえば、それまでは医師のさじ加減(知識と経験)でやっていた予防・診断・治療を、誰に…

アンディ・リーズ『遺伝子組み換え食品の真実』(白水社)

Theme 10 健やかに蝕まれて www.kinokuniya.co.jp 「結局彼らの真の目的は、貧農の飢餓を解消することではなく、企業が食料の生産と流通を支配することにあるのだ」。環境運動家である著者は、遺伝子組み換えをめぐる問題について、その前史より説き起こす。…

ハワード・W・フレンチ『中国第二の大陸 アフリカ』(白水社)

Theme 9 開発のこれまでとこれから www.kinokuniya.co.jp あまり居心地のよくない読書だった。本はすばらしい。『ニューヨーク・タイムズ』支局長として世界各地を知る著者が、アフリカへ移住した100万以上の中国人の実情を立体的な取材から描いたものだ。モ…