「scripta」紀伊國屋書店出版部の本

Verba volant,scripta manent.
言葉は去りゆくが、書かれたものは残る。
「scripta」は紀伊國屋書店出版部が季刊で発行する無料広報誌です(3・6・9・12月中旬発行)。
本ブログでは、「scripta」に掲載された"紀伊國屋書店出版部の本"の書評及び著訳者による解説を転載していきます。
→紀伊國屋書店で購入 「オルタナティブな未来のために」 毛利嘉孝(東京藝術大学准教授) 最近になって、東京を離れ地方に住む人がまわりに増えている。もちろん決定的な契機になったのは、今年三月の東日本大震災とそれに続く福島原発事故だが、それだけで…
→紀伊國屋書店で購入 「損得の彼岸の輝き」 津村記久子(小説家) 以前は、大人になればもうちょっと楽に息ができるようになるだろうと思っていた。それは二十代で働くようになって、少しの金銭的な自由を得たことによって叶えられたかのように見えたのだけ…
→紀伊國屋書店で購入 「建築と政治の密接な関係」 宇波 彰(評論家) 巨大な構築物は、権力・財力を持つ者の「欲望」の表現である。スジックは本書で、その欲望の醜さと、彼らの欲望に応じて巨大な建築を作る多くの建築家に対する痛烈な批判を繰り広げる。ス…
→紀伊國屋書店で購入 「ライスプディングにジャムを混ぜちゃうと、元にもどせない理由」 竹内 薫(サイエンスライター) まず、読後感から言わせてもらうと、「ミドルワールドにかかわった科学者たちの悲喜こもごも」がものすごく面白かった。 「この本は、…
→紀伊國屋書店で購入 「治療が有害となるとき」 水島広子(精神科医) 一九八二年に米国で患者が起こした訴訟がある。 患者は精神療法の名門であるチェストナットロッジ病院で「自己愛性パーソナリティ障害」という診断を受け、約七カ月間入院して週四回の個…
→紀伊國屋書店で購入 「いま」を読み込み読みかえる手がかりとして――『戦後日本スタディーズ』年表あとがき 道場親信(和光大学准教授) 現在紀伊國屋書店から刊行中の『戦後日本スタティーズ』(以下、『スタディーズ』)全三巻に収録された「年表」の作成…
→紀伊國屋書店で購入 「自身の姿を映し出す鏡」 茂木健一郎(脳科学者) 科学上の発見は、それが画期的なものであるほど予想されないかたちで起こる。たとえば、一九〇一年、第一回ノーベル賞の対象となったヴィルヘルム・レントゲンによる「X線」の発見。…
→紀伊國屋書店で購入 「12世紀ルネサンスに始まる思想史エンターテインメント」 池内 恵(イスラーム政治思想史・中東地域研究 ・国際日本文化研究センター准教授) 歴史好きは多い。歴史ものの本もよく売れる。戦国武将や幕末維新の志士たちの物語は幾度と…
→紀伊國屋書店で購入 「クリニックシアターの誘惑――演劇と私と、時々、ヤマダ」 山登敬之(精神科医) 一昨年ノーベル文学賞を受賞した英国の劇作家、ハロルド・ピンターは、一九五九年に「レヴューのためのスケッチ」を十数編書いている。それぞれが、上演…
→紀伊國屋書店で購入 「まだしゃべり足りません――プリオンの黒い秘密」 [二〇〇八年]二月三日放送のNHK「週刊ブックレビュー」出演の際に一押しで紹介した『眠れない一族』はプリオン病について書かれたすばらしいノンフィクションです。いろいろあって…
→紀伊國屋書店で購入 「あの子だけのために物語ること。」 千野帽子(俳人・エッセイスト) フレデリック・クレマン『アリスの不思議なお店』(鈴村和成訳)を読みました。 いわゆる「絵本」というより、もっと緩い。絵・コラージュ・オブジェ写真のかずかず…
→紀伊國屋書店で購入 「信じる人にも、信じない人にも」 玄侑宗久(作家・福聚寺住職) この本のタイトルを見れば、たいていの禅僧は振り向くだろう。「精神の自由」とは、禅の中心テーマでもあるからだ。そして本を手にとって目次を見ると、簡潔な章立てだ…
→紀伊國屋書店で購入 「自分史と重ねて読む『戦後日本スタディーズ』」 雨宮処凛(詩人) 一九七五年生まれの私にとって、八〇年代の記憶はあやふやだ。 自分の体験としては、校内暴力が下火になった頃に蔓延し始めたいじめのターゲットとなったこと、強制的…
→紀伊國屋書店で購入 「我々の問題としての「自己評価」」 中村うさぎ(作家) フランスで十数万部も売れたベストセラーとは、いかなる本であろうか? 翻訳タイトルは『自己評価メソッド』……そうか、「自己評価」か。それならば、現代日本人の抱える問題と無…
→紀伊國屋書店で購入 「感性と知性のボーダレス」 港千尋(写真家・多摩美術大学教授) ブリュットというフランス語は、ふつう「自然のままの」「もとのままの」を意味する。たとえば原石、原油や粗糖など、原材料を指すいっぽう、総量、粗利益や総生産など…
→紀伊國屋書店で購入 「寄生虫学者は「変人」か」 藤田紘一郎(感染免疫学者) 『自分の体で実験したい』は、危険も顧みず、科学のために自分の体で実験した科学者や医学者たちのノンフィクションである。本書の「おわりに」と巻末の年表では、私自身のサナ…
→紀伊國屋書店で購入 「経済は「勘定」で動く?」 勝間和代(経済評論家) 伝統的な経済学は、「合理的経済人」を前提としている。すなわち、常に情報を正確に収集し、判断ミスなく、感情のぶれなく、自分の損得を正しく計算し、答えを出す、『スタートレッ…
→紀伊國屋書店で購入 「現代、それは科学神話の時代――『流線形シンドローム』の背景」 原克(早稲田大学教授) 科学雑誌を読んでいる。米国・ドイツ・日本の、過去百年にわたるものだ。膨大な数にのぼる。おかげですっかり視力が落ちた。 科学の進歩とは脱迷…
→紀伊國屋書店で購入 「大人のための数学」 志賀浩二(数学者) 本屋に行って数学に関係する本が並んでいる書棚を覗いてみよう。まず学習用の本棚には、小学生の補習に役立つような本があり、中学生、高校生には参考書がたくさん並んでいる。それ以上は数学…
→紀伊國屋書店で購入 「村上春樹『1Q84』と『戦後日本スタディーズ』」 小森陽一(東京大学教授=共編著者) 日本における二〇〇九年上半期を、歴史化して記述する時が来たなら、二巻本の村上春樹『1Q84』(新潮社)が空前のベストセラーになったこ…
→紀伊國屋書店で購入 大橋洋一(東京大学教授=訳者) べつにしめしあわせたわけではないのだが、佐藤真監督の映画『エドワード・サイード OUT OF PLACE』が上映され た二〇〇六年に、そのDVDを販売することになった同じ紀伊國屋書店から、サイードへのイ…
→紀伊國屋書店で購入 「『知識人の時代』過去・現在・未来」 塚原史(早稲田大学教授=訳者) もう十年近く前になるが、プラハから列車で二日かけてポーランド南部の小都市オシフェンチムを訪れたことがあった。もちろん、あの「世界遺産」旧アウシュヴィッ…
→紀伊國屋書店で購入 「「モラルハラスメント」と翻訳者の社会的責任」 高野 優(=翻訳家) 翻訳者は社会的な存在ではない。と、長い間、思っていた。もちろん冷静に考えれば、それがまちがいだとすぐわかる。なんらかの職業についていて、社会と関わりを持…
→紀伊國屋書店で購入 「経済と倫理のあいだ」 小須田健(中央大学ほか講師=訳者) 最近では、店頭まで行かなくともインターネットで商品が購入できる。たいがい品物は宅配便でくる。近年急成長のこのサービスは質の向上が著しい。配送日時指定やクール便は…
→紀伊國屋書店で購入 「三丁目で見た夕日」 (中田 力・新潟大学統合脳機能研究センター長=著者) 秋晴れがきれいな日だった。 図書館の地下食堂から裏庭を抜けて北病棟に戻ろうと思っていた私は、垣根を越えたところで踵を返した。三四郎池を横目に見なが…
→紀伊國屋書店で購入 「『眼の冒険』のブックデザイン賞と次作について」 (松田行正・グラフィックデザイナー=著者) 成人になってから授賞式で賞状を受け取るなんてはじめて。賞を頂くということがこんなに気持ちのよいことなんて知らなかった、というの…