津田正(つだ・ただし)

1962年生まれ。筑波大学中退。東京都立大学人文学部英文学科卒業。
85年、研究社に入社。以後、実用英語月刊誌『時事英語研究』編集部(5年)、英語教育月刊誌『現代英語教育』編集長(7年)、書籍編集部(3年)を経て、2001-2008年『英語青年』編集長。現在は、書籍編集部勤務。
手がけた本に、高橋康也ほか編 『研究社シェイクスピア辞典』、蒲池美鶴 『シェイクスピアのアナモルフォーズ』、宮崎芳三 『太平洋戦争と英文学者』、庭野吉弘『日本英学史叙説』、舌津智之 『抒情するアメリカ』、オグレイディ 『子どもとことばの出会い』、宮川幸久・林龍次郎 『アルファ英文法』、喜志哲雄 『劇作家ハロルド・ピンター』など。
→紀伊國屋書店で購入 「寄り切られてしまいました」 ネットの普及によって、大学などで学生にレポートを書かせるとネット情報の「コピペ」だらけだという。せめて情報を書き写すだけでもなにがしかの勉強になるだろうからと、レポート作成は手書きでやらせて…
→紀伊國屋書店で購入 「伊藤礼氏の自転車生活とその意見」 4度目の年男となった今年から自転車通勤を始めた。片道50分、信号の待ち時間を含めて1時間弱の道程である。 会社の後輩から勝間和代でも読んだんですかと尋ねられた。有効に時間を使うことを提案…
→紀伊國屋書店で購入 「闊達な漱石」 漱石というとノイローゼとか胃弱とか、病気のイメージがつきまといがちだ。しかし、この本に出てくる漱石は快活で闊達な青年である。それはもう従来の漱石像を覆すほどだ。 夏目漱石は第一高等中学校時代の夏やすみに、…
→紀伊國屋書店で購入 「サナダムシが歌うダンテ」 このところ、アウシュヴィッツ体験者の文章ばかり読んでいた。フランクル『夜と霧』、エリ・ヴィーゼル『夜』、プリーモ・レーヴィの『アウシュヴィッツは終わらない』『溺れるものと救われるもの』といった…
→紀伊國屋書店で購入 「プディングの味は食べてみないとわからない」 1980年代以前の大学受験生たちなら、原仙作『英文標準問題精講』(旺文社)という英語参考書の名前ぐらいは知っているはずだ。かくいう筆者もこの本で勉強した。 この「原仙」というのは…
→紀伊國屋書店で購入 「もてない学者」 小谷野敦は毀誉褒貶の激しい人である。この本は、小谷野がその大学院生活を送った東京大学大学院比較文学比較文化、通称、「東大駒場学派」(筆者には、「東大比文」の名称のほうがなじみ深い)の歴史を語ったものだが…
→紀伊國屋書店で購入 「<流><忘>○」 原題は「読んでいない本についていかに語るか」。筑摩書房(あるいは訳者?)はこの原題に「堂々と」という副詞を付け加えた。3文字の追加が劇的な効果を生んでいる。編集者も自信があったのだろう、表紙カヴァーの…
→紀伊國屋書店で購入 「若いということは偉大なことなので」 本谷有希子。1979年生まれ、と聞いてめまいがしそうになった。若い。自分もいまの本谷と同じ年の頃、若いねえ、と言われて、若いのは俺のせいじゃないわい、と内心イラッとしたものだ。だから、若…
→紀伊國屋書店で購入 「日本仏教のラディカル」 柳宗悦が晩年に書いた仏教入門書。入門書とはいっても、この本はいわば柳の思想の集大成ともいうべき作品であり、「柳宗悦入門」という性格をも持っている。 柳宗悦は美の革命家である。ひとりの卓越した芸術…
→紀伊國屋書店で購入 「『噂の真相』沖縄特別篇、のようなもの」 学生のころ、小説や詩などにくらべて、ノンフィクションは程度の低いものだと思っていた。「事実」などにかかずらっているノンフィクションは、絵空事こそ真実であると信じている文学青年にと…
→紀伊國屋書店で購入 「おまんじゅうの番付を作る姉」 先日、父親が亡くなってお通夜を経験した。家庭では見せなかった父親の姿や、自分の生まれる前のことについて聞かせてもらったのはたいへんありがたいことであった。 この本は、2006年、88歳で亡くなっ…
→紀伊國屋書店で購入 「劇画時代の私小説」 「私小説界の救世主」などとも言われる西村賢太については、この「書評空間」でも阿部公彦氏がこの作家の本質を見事に切り取っているので、筆者が屋上屋を架す必要はないような気がした。ただ、西村については、芥…
→紀伊國屋書店で購入 「ドストエフスキーに会いたい」 このツィプキン(1926-82)の小説は、ロシアの文豪ドストエフスキーについての小説である。ツィプキンは医者であり、その方面では活躍した人らしいが、ソ連体制下で「危険分子」などともみなされていた…
→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「ごった煮の鍋とひんやりした緑豆」 上下2巻で合計900ページほどの大冊だが、こんなに読みやすくていいのだろうかと思うぐらい、読みやすい。作品は「文革篇」「開放経済篇」の2部構成。激動の現代中国を背景に…
→紀伊國屋書店で購入 「自分の人生と同じような人生を映した小説」 この小説は、退職を間近にした、60ちょっとすぎぐらいの男2人と女2人、合計4人が主人公の物語である。人生の秋を迎えた者たちが奏でる四重奏。それがこの作品の題名の由来である。 小説…
→紀伊國屋書店で購入 「表紙は原爆ドーム」 没後7年、山田風太郎の人気は落ちない。つい先ごろも『サライ』が「山田風太郎の恬淡哲学」なる特集を組んでいた。風太郎ぐらい寿命の長い作家は少ない。代表作である忍法帖シリーズが『甲賀忍法帖』をもって始ま…
→紀伊國屋書店で購入 「先輩だったかもしれない人」 最近、戦後日本を代表するノンフィクション作品を生み出した2人の作家の伝記が、出版界の片隅で、ひっそりと出版された。1冊は、上野英信の伝記『闇こそ砦』(川原一之著、大月書店)である。みずからも…
→紀伊國屋書店で購入 「続いている話」 加賀乙彦のファンである。何がいいかというと、小説が長いからだ。たとえば、死刑囚の物語である『宣告』は新潮文庫で3冊(上|中|下)。第二次大戦前後を時代背景に、アメリカ人の妻を持つ日本の外交官・来栖三郎の…
→紀伊國屋書店で購入 「多国籍企業「イングリッシュ・カンパニー」社史」 筆者はふだん、英語文学、英語学・言語学、英語教育といった分野の本を編集する仕事をしている。たまには本業に近い本も選んでみよう。 取り上げるのは、英語業界では「英語史」と言…
→紀伊國屋書店で購入 「帯はむずかしい」 数年前、ローレンス・ノーフォークの『ジョン・ランプリエールの辞書』〈上〉・〈下〉の邦訳が出たとき、帯のキャッチコピーは、「エーコ+ピンチョン+ディケンズ+007!」というものだった。昨年、長年待ち望まれ…
→紀伊國屋書店で購入 「一文芸編集者の回顧録、名著です。」 大村彦次郎さんは講談社の『小説現代』や『群像』など文芸雑誌の編集長を務めた方である。大村さんの回想記がおもしろいというのは、たしか坪内祐三さんがどこかで書いていらして、気になっていた…
→紀伊國屋書店で購入 「金玉が歌い出した男」 なぜかこれまで縁がなかった作家が車谷長吉。さいきん、車谷を読みなさいと勧めてくださる方がまわりに何人もいて、さて、なにから読んだらいいのだろうと題名を見ると、「鹽壺の匙」「業柱抱き」「白痴群」「錢…
→紀伊國屋書店で購入 「歴史が文学だったころ」 色川大吉、ぼくにはとても懐かしい名前である。もう四半世紀ほど前、日本史学科に所属していたことがあった。やろうと思っていたのは近代史、とくに自由民権運動あたりで、その頃に読んだ色川の『明治精神史』…
→紀伊國屋書店で購入 「極道者・松本清張」 推理小説家として知られる清張だが、この短篇集は、芥川賞を受賞した表題作をはじめとして、清張が若い頃に書いた純文学作品を中心に集めたものである。このところ、新潮社は、団塊世代が定年を迎えるのに合わせて…
→紀伊國屋書店で購入 「モノクロからカラーへ」 すばらしい。600ページを超える大著の最後の最後に、こんな感動的なラストシーンが待っているとは。映画『ニューシネマ・パラダイス』のそれにも似た見事な幕切れで、不覚ながら涙を禁じえなかった。 アミタヴ…
→紀伊國屋書店で購入 「尾燈好きの少年」 昨年10月にさいたま市にオープンした鉄道博物館。連日、たいへんな賑わいだという。鉄道オタクがそれだけたくさんいるということだろう。 鉄道の世界は奧が深い。全国各地の鉄道を乗り回るだけが鉄道オタクではない…
→紀伊國屋書店で購入 「名前のなかの記憶」 ぼくがこの本に出会ったのは、この川田の本にも名前が出てくる陣内秀信『東京の空間人類学』や、鈴木理生『江戸はこうして造られた』、富田和子『水の文化史』、中沢新一『アースダイバー』、四方田犬彦『月島物語…
→紀伊國屋書店で購入 「いけずな作家」 アリス・マンローはカナダの女性小説家。ここに収められた9つの短篇は最後の作品を除いて、女性、とくに人生も半ばに入った女性を主人公としている。女性に人気の作家というが、男性のぼくにもおもしろかった。小説の…
→『愛の矢車草』を購入 →『愛の帆掛舟』を購入 「愛の湯豆腐、あるいは昭和の抒情性について」 橋本治のものなら何でも読むという熱心な読者ではなかったので、ぼくは昭和から平成の最初に発表された橋本のこの2冊の短篇集を読んでいなかった。もともと新潮…
→紀伊國屋書店で購入 「晴れたお彼岸には小津安二郎が観たい」 映画監督・吉田喜重による小津安二郎論である。初版1998年。いくつかの賞も獲った名著の誉れ高い本である。しかし、名著という言葉から想像されるような、記述の古典的均整といったものからは程…