中山元(なかやま・げん)

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。
哲学者・翻訳家。
インターネットで、哲学リソースサイト Polylogos (ポリロゴス) http://www.polylogos.org/ を主宰。
著書に、『思考の用語辞典』(筑摩書房)『フーコー入門』 『〈ぼく〉と世界を結ぶ哲学』(ちくま新書)などがある。訳書には、フロイト 『自我論集』 『エロス論集』フーコー『精神疾患とパーソナリティ』メルロ=ポンティ 『メルロ=ポンティ・コレクション』デリダ『パピエ・マシン』(ちくま学芸文庫) 、エレン・メイクシンズ・ウッド『資本の帝国』バーナード・ルイス『聖戦と聖ならざるテロリズム』(紀伊國屋書店)などがある。
→紀伊國屋書店で購入 「スティグレールの哲学の巧みな要約」 本書は、スティグレールの技術と時間についての著書の内容について、フランスのラジオ番組での連続インタビューで要約したものである。これまでスティグレールの著書は何冊も訳されてきたが、彼の…
→紀伊國屋書店で購入 「フランスの戦後思想の転変」 ヴェルナール・アンリ・レヴィの長大なサルトル論。一世代下からみたサルトル論であるが、ほとんど同時代と言ってもいいほどに、長い時期をともに生きてきた哲学者による論であって、実感がこもっていて読…
→紀伊國屋書店で購入 「デリダの理論の深みをうかがわせる」 帯によるとデリダの「晩年の主著」である。この書物は二つの講演で構成される。一つはスリジィの恒例の一〇日間にもおよぶ講演とセミナーでの長文の記録「強者の理性--ならず者国家はあるか」であ…
→紀伊國屋書店で購入 「風景の歴史」 本書を読んでつくづくと関心するのは、日本の風景を構成している植物にも長い歴史があるということだ。山歩きをしていて里山におりてくると、杉林にであうことが多い。それまでの明るい道とは一変して、陽の指さないうっ…
→紀伊國屋書店で購入 「第三世代のドイツのユダヤ人たち」 上山の『宗教と科学』の巧みな整理によると、ドイツのユダヤ人論は大きく分けて三つの世代に分類できる。実世代ではなく、精神的な世代である。第一世代はフランスの啓蒙の精神を受け入れて、ユダヤ…
→紀伊國屋書店で購入 「宗教と哲学」 2003年1月にハーバーマスとヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿が対話をした時には、世界的な注目を集めたという。若い頃には革新的な姿勢を示したラッツィンガーだが、その頃にはすっかり保守化して、カトリックの右派とみ…
→紀伊國屋書店で購入 「最強のアドルノ伝」 本格的なアドルノ伝。ロ-レンツ・イェ-ガ-の『アドルノ ― 政治的伝記』が「政治的な」という但し書きをつけたのが、少しわかる。こちらは研究者がじっくりと調べた伝記で、あまり楽しい逸話はないとしても、ア…
→紀伊國屋書店で購入 「ユダヤ人問題の謎」 この書物のタイトルは、ヘーゲルのユダヤ教とのかかわりについて、伝記作者のローゼンクランツが「ユダヤ教はヘーゲルをひきつけるとともに、彼に不快な思いをさせる不快な謎だった」(p.27)と語っていることによる…
→紀伊國屋書店で購入 「久々の本格的なヘーゲル論」 ここ数年は本格的なヘーゲル論をあまり見掛けなかったので、本書のようにまとまったヘーゲル論の刊行は、ヘーゲリアンにとっては嬉しいかぎりである。ぼくもしばらくヘーゲルから遠ざかっていたので、ブラ…
→紀伊國屋書店で購入 「教会の歴史からみる中世史」 ウェーバーは、組織をアンシュタルトとセクトに分類した。アンシュタルトは人々が生まれ落ちるように加入させられる組織であり、セクトは人々が自主的な意志をもって参加する組織である。アンシュタルトの…
→紀伊國屋書店で購入 「道の諸相」 「道」という概念と「境界」という概念をキーにして、さまざまな社会史的な考察を集めた「学際的な」論集。中には「越境」という概念を細い糸のようにして、どうにかつないでいる論考もある、それでもこうした企画はふだん…
→紀伊國屋書店で購入 「アリストテレスの描いたアテナイ」 よくアテナイの民主政は前三三八年のカイロネアの戦いでテーベと同盟してマケドニアと戦って敗北した後は、輝きを失ったとされる。多くの概説書は、アテナイの歴史の記述をこの敗戦でやめてしまうの…
→紀伊國屋書店で購入 「異様な思想家の「遺言」」 イリイチの晩年に行われたインタビューで、前の『生きる意味』と同じように、イリイチが胸襟を開いたディヴィッド・ケイリーが対話の相手。特に後期の著作についての説明が興味深い。晩年のフーコーは、ニー…
→紀伊國屋書店で購入 「アジテーター、ペイン」 トマス・ペインはアジテーターとしては一流の人物だが、政治思想はあまり高く評価されていない。日本だけでなく、アメリカ本国でもそうらしい。本書は、ペインの疾風怒濤のような生涯についてはそれほど詳しく…
→紀伊國屋書店で購入 「イタリアン・コンプレックス」 フロイトはイタリアに憧れていた。ゲーテと同じように、そしてイタリアを訪問するまでには長い時間がかかったのだった。一八九五年になってやっと弟のアクレサンダーとともにヴェネティアを訪問する。そ…
→紀伊國屋書店で購入 「初期ハイデガーの注目論文「ナトルプ報告」」 ハイデガーが教授職に就職するために、書きかけの著作の一部をタイプうちして、提出した論文で、ナトルプ報告として有名である。『存在と時間』の前段階のハイデガーの思考を示したものと…
→紀伊國屋書店で購入 「ラジカルな思考の秘密」 ずっとインタビューを断っていたイリッチが引き受けた連続インタビューを原稿に起こした書物で、イリッチの著作の背景にある事情がよく分かる。たとえば脱学校という概念でイリッチが要求したのは、学校を廃止…
→紀伊國屋書店で購入 「初の入門書」 アガンベンの仕事もかなりまとまってきて、彼の思想を紹介する書物が登場し始めた。英語版でも五冊から六冊はある。これはドイツの研究者による入門書である。雑誌『現代思想』の特集号(二〇〇六年六月号)を別とすると、…
→紀伊國屋書店で購入 「一級のミステリー」 これは二〇〇六年五月に初めてコプト語の原文が発表された『ユダの福音書』の本文とその読解である。新約聖書の伝統的な外典には、このような文書は存在しない。「裏切り者」のユダを書き手あるいは主人公とする福…
→紀伊國屋書店で購入 「ホネットのポストモダン論」 フランクフルト学派の第三世代のホネットの粘り強い思考が記録された一冊である。時事的な論文も含まれるが、注目は前著の『承認をめぐる闘争』での考察を展開した「正義の他者」と、文明がもたらす害悪に…
→紀伊國屋書店で購入 「認知科学の可能性と行き詰まり」 『心の哲学』のシリーズ二冊目『ロボット篇』である。ただしロボットが直接に登場するのは、フレーム問題を取り上げた第三章「ロボットがフレーム問題に悩まなくなる日」だけであり、認知科学のさまざ…
→紀伊國屋書店で購入 「マキアヴェッリ読解の参考に」 マキアヴェッリの同時代にフィレンツェで活躍していて、マキアヴェッリとも仲のよい名門貴族だったリドルフィ家の末裔が、愛情をこめて著した詳細な伝記である。ときに歴史家の枠組みを越えて、当時の教…
→紀伊國屋書店で購入 「現代の都市を読み解く」 本書は都市の地理学、とくに都市の空間についての地理学の入門書であり、さまざまな理論がわかりやすく説明されている。最初の部分では、都市の同心円的な発展という古典的な理論を提示したシカゴ学派の都市の…
→紀伊國屋書店で購入 「資本主義と倫理」 この書物でセンが語るのは、きわめて明確で簡略なことである。経済学には、アリストテレス以来の「善き生」を求める倫理的な伝統と、インドのカウティリヤの『実利論』以来の「工学的な」問題処理に専念する伝統があ…
→紀伊國屋書店で購入 「貨幣の正義」 マルクスからは「マンモンの神」と呼ばれて嫌われた貨幣であるが、これが物物交換の不便さを解消する文明の工夫の一つであることは間違いない。しかしレヴィナスが指摘するように、貨幣の経済学や社会学は多いとしても、…
→紀伊國屋書店で購入 「空と海をめぐる感性の変化の歴史」 ちょっと見にはバシュラールの著書のようだが、精神分析ではなく、感性の歴史である。『においの歴史』と『浜辺の誕生』の著書のあるアラン・コルバンのお手のものだろう。とくに「海」に関しては、…
→紀伊國屋書店で購入 「アメリカの政治理論のよくできた見取り図」 この書物は『現代政治理論』と題されてはいるが、あまり正確ではないかもしれない。あくまでも英米の、というよりもアメリカの政治理論の分析と考察なのである。フランスの政治理論もドイツ…
→紀伊國屋書店で購入 「ブレーブ・ニューワールド時代の哲学」 クローン人間だけでなく、両親が生まれてくる子供のための善を祈って遺伝子操作を行えるようになる時代がもう間近に迫っている。こうした「ブレーブ・ニューワールド」(ハクスレー)を前にして…
→紀伊國屋書店で購入 「言語習得の深い謎」 ぼくたちは誰もが、まったく知らない言葉を覚えて、使いこなせるようになるという不思議な、ほとんど奇跡的なことを実現してきたのである。しかしそれでいて、赤子がどのようにして言葉を習得するのかは、ほとんど…
→紀伊國屋書店で購入 「「社会」の発明」 かつてアレントは『人間の条件』において、ギリシアの公的な空間と私的な空間の分離について説いた後、近代、とくにフランス革命になってからこの二つの空間とはことなる社会的な空間」が登場し、それが公的な空間を…