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2013年06月13日

『会いに行ける海のフシギな生きもの』吉野雄輔/武田正倫(幻冬舎)

会いに行ける海のフシギな生きもの →紀伊國屋ウェブストアで購入

 私はあまりダイビングに興味がありません。

 あれは、なんていうか、きらきらした人がやるものですよね。まず「南の島に行く」ということ自体が無理です。南の島でなにすればいいんですか。パラソルの下でブルーハワイ飲んで、昼は陽気なインストラクターと海に潜って、夜は地元の居酒屋で現地の人と交流? そんな人間力の高いこと、できそうにありません。珊瑚礁の美しい魚たちにも気後れしてしまいそうです。

 私が親しみを感じる「海」とはもっと怖いもの。漁師町で育った祖母がつくる目玉やはらわたがごろごろ入っている魚の粗煮。フナムシがカサカサカサと走り回り、岩にはフジツボがびっしりと貼りつき、海水に浸かればコンブ(っぽいもの)がしつこく足に巻きついてくる。小学校の臨海教室では60分遠泳を強いられ、夏休みに行った伊豆の海では友達が潮に流される(※幸い、助かりました)。食うか食われるか。やるかやられるか。生きてるのか死んでるのか。私にとって海はそういうイメージなのです。

 そんな私の心にジャストフィットしたのが、深海生物でした。深夜、電気を消してPCの前に座り、膨大な深海映像をチェック。心が休まります。飢えたヌタウナギが貝をむさぼり食うところなんて「一生懸命生きてる…!」って感じがするじゃないですか。お洒落とかコミュニケーション能力とかかなぐり捨てた、なりふり構わぬこの姿。すてきです。6月22日に行われるしんかい6500の潜航生中継もとても楽しみです。

 さて、そんな私に、知り合いの編集者さんが「会いに行ける海のフシギな生きもの」という本をくださいました。私が同じシリーズの「深海のフシギな生きもの」を愛読しているからだと思います。深海の生きものにはいくら会いたくたって会いに行けません。だから今度は「普通の人もダイビングさえすれば会いに行ける生物を紹介するよ!」というコンセプト。

 でも私はダイビングが苦手だからな。やったことないけど、多分、向いてないからな。浅海の華やかな生き物に興味持てるかな。不安に思いつつ、気にはなっていた本なので、喜んで頂戴して帰ってきました。

 ページをめくって、「妙だな」と思いました。真っ青な海。光あふれる世界。でも、出てくる生き物がなんかおかしいのです。固めるのに失敗したゼリーのようなダンゴウオ。薬品で染めたような不穏な色のホヤ。星型の棘にくるまれた装甲車のようなナマコ。「漂流教室」に出てきたあれとしか思えないボビッドワーム。結論から言うと、すごく、キモイ生物ばかりなのです。

 表紙に戻って帯を見ると「水中カメラマンが35年間撮りためたキモかわ写真満載!」と書かれていました。さすが、「会いに行ける海のフシギな生きもの」をつくった編集者さん。センスいい。「キモいいね!」ボタンを押しまくりたくなります。切り取られた腕から再生中のヒトデとか、死ぬと星の砂になるというホシズナ(これを見たら星の砂を御土産に買おうなどと思えなくなる)とか、生々しすぎます。最後に掲載されてる生物なんて、シアノバクテリア(死骸含む)ですから。

 でも、これなら会いに行きたいです。これを見るためだったら頑張れます。潮焼けした髪の若者に混じって、海の家で焼きそば頼むくらいなんでもないですよ…!

 ちなみに私が最も気に入ったのはウミエラ(海鰓、と書くそうです)を撮影した薄暗い海底の写真です。「海の墓標?」と題されたこの生物たちは、夜になると羽根を広げて食べものをとるそうなんですが、羽根の部分はたくさんの個虫が集まったものなんですって。意味がわからないですよね。不気味です。そしてとても素敵です。

 南の島が似合わないあなたも大丈夫。おすすめの一冊です!

 


→紀伊國屋ウェブストアで購入

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