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2014年03月11日

『Double Down』Mark Halperin, John Heilemann(Penguin)

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「こうしてオバマは再選された」

2012年に行われたアメリカ大統領選。アメリカの政治の動きが好きな僕は、一度もオバマ大統領の再選を疑うことはなかった。
これは、僕がオバマのファンであり民主党を支持する人間であるというのではなく、大統領選の前に行われる共和党の予備選ディベートや、政治ニュース、候補者たちのスピーチなどをニューヨークでずっと見聞きし続け、その時の共和党にはオバマを倒す力や政策はないと思ったからだ。

共和党の大統領候補のトップはミット・ロムニーだったがどちらかというと中道よりの彼の政治姿勢は、共和党のなかの極右層からの支持を得ることができず、いつまでたっても他の候補者たちを追い抜いて完全優位な立場に立つことができなかった。

共和党予備選の途中の世論調査でロムニーを追い抜き一位になったのは、ティーパーティが支持したミシェル・バックマンであり、リック・サントラムであり、ニュート・ギングリッチだった。

そして、ゴッドファーザーズ・ピザで成功を収めたハーマン・ケインが連邦税、法人税、消費税全てを9%にする「ナイン・ナイン・ナイン」税制計画を打ち出し保守系からの人気を得た。ケインのような人物を持ち上げなければならないところに今の共和党の苦悩が現れていると思う。

注目を集めたケインだが、彼からセクハラを受けたと訴える女性が次々と現れ、最後には長年不倫関係を続けたという女性までが現れ、ケインは撤退を余儀なくされた。

一方、最終的に共和党選出の大統領候補となったロムニーも、「女性で一杯のバインダーが届けられた」「人を解雇するのが好きだ」「企業は人と同じだ」「貧乏人のことはあまり気にならない」などの失言を連発し、外遊先のイギリスではイギリスのオリンピック準備体制に疑問を投げかけ、イギリス首相、ロンドン市長、地元の新聞から痛烈な批判を浴びた。

彼の失言は隠しカメラで取られた、あの有名な「 47%コメント」に続く訳だ。

「There are 47% of the people who will vote for the president no matter what ... who are dependent upon government, who believe that they are victims. ... These are people who pay no income tax. ... and so my job is not to worry about those people. I'll never convince them that they should take personal responsibility and care for their lives」

瀕死の状態だったロムニーだったが、コロラド州で行われたオバマ大統領との第1回目もディベートで大勝利し、いきなり息を吹き返した。

そして、11月の選挙へと向かっていくのだが、この2012年の大統領選を追い、ロムニー、オバマ両陣営、それに共和党の他の候補者陣営の動きを内側からみせてくれるのがこの「Double Down」。アメリカの政治好きにはそこはかとなく興味深い。

これは2008年の大統領選を追った「Game Change」の続編と位置づけられていて、著者もタイム誌のマーク・ハルペリンとニューヨーク誌のジョン・ハイルマン。

このふたりは、僕がよく見ているMSNBC局の政治アナリストでもあるので、僕にとってはお馴染みの人物たちだ。

この本の出だしは、オバマが苦戦を強いられたコロラド州のディベートの後に、民主党のジョン・ケリーをロムニーに見立てて行われた練習ディベートの場面から始まる。

この集まりでオバマは仲間にこう語る。

「You ever known me to loose two in a row?」

この言葉が彼の真の自信のあらわれなのか、彼が自分を納得させるための
言葉なのか分からない。しかし、調査ではわずかであるがまだロムニーをリードしている。オバマ陣営は怯え始めた民主党陣営に次のようなメッセージを送ろうと決める。

「Keep calm and carry on. 」

オバマから始まるこの本だが、民主党はオバマがいるので予備選はなかったが、共和党はロムニーを党の大統領候補とするまでに予備選があり、多くの予備選ディベートがあった。また、ロムニーが大統領候補と決まった後も、誰を副大統領候補に選ぶのかのドラマもあった。

この本では、ロムニーはもちろん、その他の大統領候補に名乗りをあげたロン・ポール、ニュート・ギングリッチ、リック・サントラム・リック・ペーリー、ジョン・ハンツマン、ハーマン・ケイン、それに極めつけはドナルド・トランプがいかに動いたかが描かれている。

そして、副大統領候補としてロムニー陣営の最終リストに入った、クリス・クリスティー、ティム・ポーレンティ、ロブ・ポートマン、マルコ・ルビオ、そして副大統領候補となったポール・ライアン。ロムニーから見たそれぞれの政治的評価が述べられている。

また、最初のディベートで不利となったオバマがいかに2回目、3回目のディベートで勝利していったのかの経過も読み応えがある。

470ページと長いが、アメリカの大統領選がいかに戦われるがよく分かる本だ。


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