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2013年12月28日

『This Is How You Lose Her (Deluxe)』 Junot Diaz(Riverhead Books)

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「今のアメリカを映し出す作品」

僕の最も好きなアメリカン・ライターのひとりジュノ・ディアズの新刊短編集『This is How You Loose Her』。
デビュー作品となった『Drown』が短編集で、彼は短編集が得意なのだろうと僕は勝手に思っていたが、前作の『The Brief Wondrous Life of Oscar Wao』は小説で、彼は初めてとなるこの小説で僕の心を木っ端みじんに砕いてくれた。

この小説はタイム誌でその年のベスト・フィクションに選ばれ、ニューヨーク・タイムズ紙ではかなり長い間ベストセラー・リストに入っていた。おまけにこの小説で彼はピューリッツア賞まで取った 。

OK, Mr. Diaz, you’re a darn good storyteller.

前作の小説を読み、彼は短編作家ではなく優れたストーリー・テラーだと知った訳だ。

僕は『Drown』を発表したばかりのディアズに一度インタビューをしたことがある。

場所は、発行元となったリバーヘッド・ブックスの一室。確か、出版社の広報がアレンジしてくれたインタビューだったと記憶している。

It was very lucky for me to have an interview with Mr. Diaz then.

そのインタビューで彼は、ドミニカ共和国での子供時代や、アメリカに移り学校の授業が面白くなく、先生の話は聞かず本を読んでいたことや、友人宛に手紙を書いていたことを話してくれた。

それと、華々しいデビューを遂げた彼の作家としての意識や生活も話してくれた。

今、ボストンにあるMIT(マサチューセッツ工科大学)で教え、アメリカを代表する作家のひとりとなった彼にインタビューをするのは大変だろうと思う。

最近ではイーストビレッジのアスタープレースにあるスタバの窓際の席 でひとりコーヒーを飲んでいる姿を見かけた。I bet you don’t remember me.

僕が彼の作品を身近に感じるのは、作品の舞台がニュージャージー、ニューヨークが多いこともある。

そして『This is How to Loose Her』にはボストンが舞台になった作品がある。

Hey, I was a student in Boston myself!!


さてでは『This is How to Loose Her』の話。

語り手となっているのはユニオール(違う作品もありますが)。『Drown』でも登場し『Oscar Wao』でも登場する語り手で、ディアズのオルター・エゴ的存在と言われている。

全部で9本の作品が収められていて、ユニオールの関わる女性やガールフレンドの話が多い。例えば、最初の作品「Sun, Moon, Star」は本命のマクダレナという女性との話だ。ユニオールはマクダレナが好きだが、浮気性の彼は他の女の子とも寝てしまう。その女の子がエロ雑誌でも書かないような描写でふたりの情事の様子を書いた手紙を送ってくる。その手紙をマクダレナが読み、ふたりの関係がぎくしゃくするのはもちろん、彼女の友達からも嫌われる。以前は、言い出せば確実だったデートも危うくなり、かければ誰よりも彼に優先権があった電話も待たされるようになる。彼女の中での彼の地位が下がっていることを感じるユニオールは「俺たちの関係は一体何なんだ」と文句を言うと「実は、私もそれを考えていたところなの」と切り返される。

また、最後の「The Cheater’s Guide to Love」はボストンが舞台となり、主人公のユニオールは大学で教えていて、今のディアズのようだ。婚約までした女性に振られ、諦めきれずに、しかし他の女性とも関係を持ちつつ過ごす5年間のことが語られる。

ディアズの作品はメインストリートのアメリカ社会から外れた移民の視点から書かれているのが魅力だが、作品の中で彼が使う言葉もヒスパニック系のスラング、ヒップホップスラング、ストリートの言葉、前回の小説ではオタク系の日本語の言葉と多様だ。

This is a high-energy book. People in the book are acting disoriented and confused. It’s a great book for sure!


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