« 2013年09月 | メイン | 2013年11月 »

2013年10月28日

『On the Noodle Road : From Beijing to Rome, with Love and Pasta』Jen Lin-Liu(Riverhead Books)

On the Noodle Road : From Beijing to Rome, with Love and Pasta →紀伊國屋ウェブストアで購入

「麺の発祥地を求めて旅したシルクロード」

麺(パスタ)は13世紀にマルコ・ポーロが中国からイタリアに持ち帰ったもののひとつと言われているが、それは本当なのか。それとも、ヨーロッパではそれ以前にすでにパスタを食べていたのか。これは多くの人が問いかける謎だ。
この本は中国系アメリカ人のフードライターのジェン・リン–リューが約6ヶ月をかけて北京からローマに続くシルクロードを巡り、誰が麺を発明し、いかに伝わっていったかを探ろうとしたものだ。

ジェンはカリフォルニアに生まれた中国系2世で、奨学金を得て中国に行き、北京で外国人を相手とする料理学校を創設した女性。一方で、彼女は食べ物、文化、旅についての記事をニューヨーク・タイムズ紙、ウォール・ストリートジャーナル紙、ニューズウィーク誌などに寄稿してきた。

彼女のこの経歴を読んで、シルクロードの旅をして報告をおこなう今回の本のテーマに彼女はぴったりの人物だったと思った。

彼女の旅は、自分の料理学校の先生であるふたりのシェフと共に始まる。まずは、シェフのひとりの生まれ故郷である西山省を目指す。そこにはそのシェフの妻と子供が暮らしているが、彼らは年に数回しか一緒の時を過ごさない。いわゆる出稼ぎで、妻が出稼ぎをせず故郷に残っているだけまだ恵まれているという。ここでそのシェフは家族の元に残り、ジェンたちはそこから南に向かい、そこでもうひとりのシェフと別れを告げる。

ジェンによると中国は南に行くと米の文化となり麺の文化は薄れていくという。
次に到着した西安ではイスラム教の料理を紹介する現地のフードライターと共にパンとスープの料理を食べ、以前はパンと麺を表すのに同じ言葉を使っていたことを調べ、麺の起こりはパンからではないかと考える。

その後、チベットに向かいアメリカで知り合った70歳を超えるイザベルと共に過ごす。イザベルはもう長くチベットに暮らしている。

ジェンはチベットから新疆ウィグル自治区に行く。中国人というと一般的に人々は漢民族を思い浮かべるが、西に行くに従い少数民族が増えていき、新疆はヨーロッパ人に近いウィグル人の住む地域だ。ジェンの夫でジャーナリストであるクレッグもここから彼女に同行することになる。

チベットや新疆ウィグル自治区では現地のピラフなどを食べるが、文化的なことを書こうとすると政治的問題は避けて通れない。見た目は漢民族である著者は、彼女から見た中国とこれらの地区の関係を語っている。

新疆ウィグル地区からは、カザフスタン、ウズベキスタン、タクメニスタンをクレッグと行く。中央アジアで食べた麺は、呼び方も見かけも中国のものと似ており、ここが麺発祥の土地だとは考えられないと結論づける。ウズベキスタンでは、中国の漢民族と中央アジアを結びつけたウィルグル族が麺を発明したとする説がある。中央アジアの麺と中国の麺の類似を考えればウィグル族は麺の伝承に何らかの役割を果したことは間違いない。

しかし、現在、ウズベキスタンの食べ物に最も影響を与えているのは旧ソ連だと言う。 

そして彼女はそこからイランに入る。イランでは旅行代理店を使ってガイドを手配してもらい、ツアーを組んでもらう。旅程が事前に決まったツアーでないとビザが下りないのだ。そして後に分かるのだがガイドは彼らの行動を常に政府に報告していた。

窮屈なイランからトルコを通り、そしてギリシャを抜けてイタリアに向かう。

イタリアではナポリ、ボローニャ、フィレンツェ、シエナそしてローマを旅する。その間、彼女はレストランのシェフや主婦などから料理を教わる。

さて、では麺はどこで発明されたのか。それは、結論がでないが、この旅を通して彼女は成長し、麺の起源についてもある種の回答を出す。そして、この旅を終えた後に自分が妊娠していることを知り、彼女は新たな道を進むことになる。

シルクロード紀行であり、彼女のメモワールであり、食べ物記でもあるかなり楽しめる本だった。


→紀伊國屋ウェブストアで購入

2013年10月04日

『Captain Outrageous』Joe R. Lansdale(Vintage Books)

Captain Outrageous →紀伊國屋ウェブストアで購入

「おとぼけ二人組の痛快アクション小説」

アメリカの北東部の大学生たちは、三月の学期の途中に二週間ほどあるスプリング・ブレーク(春休み)には、気の合った仲間たちとフロリダに遊びに行くのが一種の伝統となっている。
大学のある寒い街を離れ、ビーチ沿いの温かいフロリダの街でめちゃめちゃに羽根を伸ばすのだ。男子学生も女子学生も、初めから遊ぶ気いっぱいなので、学生に乗っ取られた街は一時的に「セックス・ドラッグ・アンド・ロック・ン・ロール!」の世界になってしまう。

僕がボストンで学生をやった八〇年代にはメキシコのリゾート地、カンクンがすでに学生が押し寄せる街になっていた。

そのカンクンから南にバスで一時間ほどのところにプラヤ・デル・カルメンという町がある。カンクンに比べると小さいが、観光地として人気のある町だ。

今回、読んだのはこのプラヤ・デル・カルメンが舞台となったコミカルなアクション・サスペンス小説だ。

物語はアンチ・ヒーローのハップ・コリンと相棒、レオナード・コリンズが活躍するシリーズの第六作目となる。

ふたりが守衛として働く会社の社長の娘を、ハップが助けたところから物語は始まる。ハップはそのお礼としてお金と休暇を社長からもらう。彼が選んだ休暇の過ごし方は、レオナードを連れてのクルーズ船旅行だった。しかし、クルーズ船がプラヤ・デル・カルメンに寄港した時に、いさかいを起こした船の乗務員にだまされプラヤ・デル・カルメンに置きざりにされてしまう。そこから、事件が始まり、ふたりは地元マフィアのボスと戦うことになる。

ふたりの戦いに手を貸すのが、私立探偵のジム・ボブ・ルークとハップのガールフレンドであるブレット。この四人が揃えば、物語はもう止まらない。メキシコのチリがたっぷり振りまかれたような会話が交わされ、暴力事件が次々と起こる。

ハップは一時、事件を忘れようとするが、新たな事件が起こり、どうしても問題に巻き込まれてしまう。気のすすまないまま道を少しずつ歩いている内に、気がつくと敵の真只中に到着してしまったというような展開だ。

脇役たちのキャラクターも面白い。特にブレットは職業が看護婦のくせに品のない言葉を臆面もなく口にするところがいい。

エンディングはハッピーエンドといえるが、友人を失い、守ろうとした人間も殺されてしまうというほろ苦さが残るものだった。

痛快さのなかにもペーソスが漂うエンタータインメント作品だ。


→紀伊國屋ウェブストアで購入