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2013年07月10日

『Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage 』Alice Munro(Vintage Books)

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「アリス・ムンロの短編集」

もう随分昔の話だが、僕がカナダ人作家、アリス・ムンロの名前を知ったのは、ジョン・アービングやニック・ホーンビイといった僕の好きな作家のインタビュー記事からだった。
ホーンビイはよく読む作家としてアリス・ムンロを挙げていたし、アービングにいたっては最も好きな作家に彼女の名前を挙げていた。

ムンロの作品を読めば、何故アービングやホーンビイが彼女を好きな作家として挙げているか分かると思う。それは、ムンロがストーリー・テラーとして優れた才能があり、運命の不思議さを物語のなかでみせてくれる作家だからだ。

その作風をアービングと比較すると、アービングは多くの言葉を使い、コミカルともいえる物語の構成のなかから運命の不思議さを浮かび上がらせるが、ムンロは短編という形を使い、言葉で語らない部分も読者に想像させながら物語を進めていく。

ムンロは短編作家といえるが、ほかに短編作家というと、レイモンド・カーバーがいる。カーバーは人生の危機の瞬間を切り取り、多くの作品とした作家だった。

一方、ムンロの作品はカーバーのものよりずっと長く、人生の危機の瞬間よりも、人生の微妙さ、運命のおもしろさを描いている。また、主人公が老年に達した女性が多いのもムンロの作品の特徴だろう。そのほか、直面する死とまだ心に残る愛情、または新たに芽生えた恋心などもムンロの作品のテーマだ。

さて、今回紹介する本この本は、ムンロの11作目の作品。表題作を含め9本の短編が収められている短編集だ。

表題作である物語は、家政婦として働くジョナ・パリーが主人公となっている。ジョナが働く家の主人にはふたりの娘がいたが、長女はすでに死んでしまっている。ジョナはその長女の元の夫ケンと文通をしているが、その手紙はケンが書いているのではなく、次女とその友人が悪戯として書き始めたものだった。

つまり、ジョナの手紙はケンの手元には届かず、次女とその友人の手に渡り、彼女たちがケンのふりをして返事を書いているのだ。悪戯の手紙の内容はだんだんと親密さを増し、遂にジョナは結婚を胸にケンを訪れる決心をする。

ジョナの手紙を一通も受け取っていないケンは、もちろんジョナが来ることなど知らないが、ちょうどその頃、重い病気を患ってしまう。自分のもとを訪れた実家の家政婦に驚くが、口を聞く元気もない。

ジョナはケンを看病し、経済的に窮地に陥っていたケンの生活を建て直す。最後にふたりは結婚をして家庭を作るという物語だ。この50ページほど作品のなかにジョナとケンの物語だけではなく、次女とその友人の人生、ジョナが働く主人の生活、古い町の様子などが書き込まれている。

タイトルの「Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage」は次女とその友人が作り出した遊びで、それぞれの言葉を紙切れに書き、その紙切れを選ぶことでボーイフレンドとの関係がこれからどうなるかを占うというものだ。一見偶然とも思える、何かの力に左右されたジョナとケンの運命を暗示するタイトルだ。

しっとりとした物語を読みたい読者にお勧めだ。



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