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2013年05月14日

『The Lovely Bones』Alice Sebold,(Back Bay Books)

The Lovely Bones →紀伊國屋ウェブストアで購入

「スーパーナチュラルな設定の優れた文学作品」


今回紹介するのは、2002年6月に出版され。その後わずか2カ月間で130万部を売り上げた小説『The Lovely Bones』。2009年には映画化もされている。

『The Lovely Bones』の著者はアリス・セボルド。彼女は、大学生の時にレイプに遭い、その体験を綴ったノンフィクション『Lucky』という本も出版している。

『The Lovely Bones』の内容は、レイプされ殺されてしまった14歳のスージーが天国から家族や友人の事件後の人生をみるというもの。もちろん、彼女を殺した犯人の生き方も追う。

物語が始まりすぐにスージーは殺され、天国に行く。警察が犯人を追うが、手掛かりがない。犯人はスージーの家の近くに住むハービーという中年男だ。読者は最初から犯人が誰であるかを知らされ、犯行の様子も読むことができる。

警察が事件の手掛かりを追う場面や、スージーのいる天国がどんなものかの描写も出てくるので、読み初めはスリラーあるいはファンタジーかなと思ったが、これは家族愛や人々の人生を描いた文学作品といえる。

著者は物語のなかで残された家族、特に父親の怒りや妹の成長、それに友人たちのそれぞれの人生を描いている。

天国が出てきたり、レイプや殺人事件を扱ったりしながら、スリラーにならずに質の高い文学になっているところがすごい。

題材として読者を引き込みやすい「事件」そのものを追わず、そんな「事件」に直面した人々の心の動きに注目しているのだ。著者はこの作品を書き上げるまでに5年をかけたという。意欲作といえるだろう。

この1作品に5年をかけて書くことが長いとみるか短いとみるかだが、アメリカの作家はだいたい1〜3年をかけて1本の長編を書くことが多いようだ。セボルドもこの小説を書いていた5年の間に『Lucky』を書き上げているので、とりわけ完成に時間がかかったという作品ではない。なかにはトマス・ウルフのように10年で1作品という作家もいるのだから。

アリス・セボルドは、自らの体験を生かし(とても衝撃的だったに違いない)、そんな事件を題材にした小説を仕上げたのだ。事件のいまわしさよりも、人間を描いたところに成功の秘密があるように思う。

最後は、もちろんスージーは生き返らないがハッピー・エンドとなる。レイプ、殺人という暗いテーマの作品だが、読後感は爽やかだった。


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