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2013年01月21日

『Wasted : A Memoir of Anorexia and Bulimia 』Marya Hornbacher(Perennial)

Wasted : A Memoir of Anorexia and Bulimia →bookwebで購入

「ブリーミアにかかった少女の話」

 昔ニューヨーク・タイムズ・マガジンでシカゴに住む16歳の女子高校生の話を読んだ。その女子高校生は金髪にグリーンの瞳そして長身。チア・リーダーでもある。
 だが、彼女には秘密があった。それは「セルフ・ミューティレーション」(リストカット)。つまり、自分の身体をナイフで傷つける一種の心の病に冒されているのだ。14歳の時に性的な噂を流され、バスルームの中でカッターで自分の足を切り裂き、流れる血を見て、心の中の苦痛が和らいでいくのを感じたという。

 アメリカで「セルフ・ミューティレーション」をおこなう若者は多い。ニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事はこの心の病と患者たちを追ったレポートとなっていた。

 この話題を追った本に、自分自身を切り刻む若者を百人近くインタビューしたマリリー・ストロング著の「A Bright Red Scream」がある。

 今回、読んだ本『WASTED』は「セルフ・ミューティレーション」の話ではないが、同様に若者、特に十代の女性がかかる異常食欲が題材となった本だった。

 ひとつは「Bulimia(ブリーミア)」と呼ばれる、食べたあとに故意に食べた物を吐き出してしまう病。そして「Anorexia(アノレキシア)」という食べること自体を拒否する病だ。

 著者であるマーヤ・ホーンバーチャーは9歳の時にブリーミアになり、15歳からはブリーミアとアノレキシアの両方を経験する。大学時代には体重が52ポンド(約23キロ600グラム)までになってしまう。

 何故、食べ物を拒否し、また食べたものを吐き出してしまうのか。著者の答えはひとつではない。家庭環境、痩せた女性を美しいとするアメリカ文化、体重を落とし新しい自分になりたいという願望、自己憎悪、狂気、コントロールを得たいという願い、などがその理由だ。

 著者は食べるという行為に対し、多くの規律を自分で作り出していく。吐いた時に最後まで吐いたことを知るため、必ず色彩の強い食べ物を最初に食べる。食事を取らなくとも毎朝5マイル(約8キロ)走る。その時、必ずドアなど決まったものに触れなくてはならない。もし、触れそこなった場合は1マイルよけいに走る。食べ物のカロリーを計算し、80カロリー(食パン1枚分のカロリー)を1ユニットとし、1日に取るカロリーを31・25ユニットにする。それが達成できたら16ユニット、10ユニットとユニット数を下げていく。著者は最後には1日4ユニットまでに食事の量を押さえてしまう。

 最後まで読み終えても、状況はよくなるものの著者の病が完全に直るわけでもない。そして、この問題はもちろん著者ひとりの問題ではない。

 読んでいてどんどん苦しくなる本だった。




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2013年01月10日

『No Easy Day 』 Mark Owen, Kevin Maurer (CON)(E P Dutton)

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「ウサマ・ビンラーディン急襲作戦の回想録」

 2011年の5月、国際テロ組織アルカイダの指導者「ウサマ・ビンラーディン」がアメリカの米海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)の急襲作戦により殺害された。
 この作戦遂行はネイビー・シールズのなかでも対テロ特殊部隊となるチーム6が中心となった。チーム6はネイビー・シールズのなかでも特別で、選抜されたシールズだけがチーム6に入ることができる。また、組織的にも独立していて対テロのエリート特殊部隊となっている。

 ビンラーディンの急襲作戦に参加したシールズ・チーム6のひとりが、作戦の回想録を出版すると聞いたのは12年の夏のことだった。そして、9月初めその本「No Easy Day」が出版された。9月11日に出版されるという噂も流れたが、出版社の方もさすがにそれはやり過ぎと思ったのか、バーンズ&ノーブルによると発行日は12年の9月4日になっている。

 著者はマーク・オーエン(ジャーナリストのケヴィン・マウアーが共著)。もちろん偽名だ。本が出版される前からマーク・オーエンは本当は誰か、が話題となっていた。この本が出るや、いきなりベストセラーとなり、12年で最も売れた本の1冊となった。そして、マーク・オーエンの実名がマット・ビソネットだとメディアが伝えたのは、本が出版されてから1週間も経っていない時期だったと思う。

 マット・ビソネットはビンラーディンが殺された3階に突入したメンバーのひとりなので、ビンラーディンの殺害現場を直接目撃している。

 この本をもっと早く読むつもりだったが、先に読まなくてはならない本もあり、やっと読むことができた。

 本の出だしには、ブラックホーク・ヘリコプターに乗り込んだオーエンたちが描かれる。新月の夜、アフガニスタンのジャララバードからブラックホークに乗り込んだチーム6。ビンラーディンがいると思われるパキスタンのアボッターバードまでは1時間半の距離だ。

 ビンラーディンのことは、シールたちの間でこの数年間話題となっていて「もうすぐ帰る。ビンラーディンを殺すことにならない限り」という文句が彼らの間の常套ジョークとなっていた。

 作戦ではオーエンたちのチームの乗るブラックホークが、ビンラーディンがいると思われるビルの上からロープを下ろし、オーエンたちがそのロープを伝わりビルの天井から下に攻撃をかける。一方、ほかのチームはビルの敷地内に着陸し下から上に攻撃をしてくというものだった。

 オーエンたちの乗るブラックホークがビルの上で空中停止を試みるが、なにかがおかしい。
 
 「旋回。旋回」というパイロットの声がオーエンの無線のなかに響く。これは最初の計画が変更され、地上に着陸し、オーエンたちも下から攻撃をすることを意味している。オーエンは気持ちを切りかえる。ブラックホークが90度の旋回をする。ブラックホークの尾翼がもう少しでビルに当たるところだった。

 ブラックホークはそのまま体勢を立て直すことなく墜落していく。オーエンは機体から出ていた脚を必死になって胸に押し付ける。オーエンのなかでは、すべてがスローモションとなる。オーエンは墜落の衝撃に身を構える。

 本はここから、オーエンがこれまでの自分の人生を振り返る形式で進められていく。

 ネイビー・シールズに入り、それからチーム6選抜訓練を受ける様子や、チーム6に選ばれてから2009年にソマリア沖で海賊に拉致されたアメリカ人船長の奪回作戦の模様などが描かれる。

 そうして、ビンラーディンの急襲作戦。ビンラーディンのいる3階に突入したオーエンは、ビンラーディンがその時どうしていたか、どうやって殺されたかなどを語っている。

 この本に対してアメリカの国防省は、機密漏洩の訴えは内容を見てからとしていたが、その訴えは起こしていない。


 


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