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2012年10月22日

『Layer Cake』 J. J. Connolly(Black Cat)

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「足を洗いたいイギリス人マフィアの最後の仕事」

 A life of leisure.日本語にすると悠々自適の生活。アメリカ人やイギリス人の思い描く理想の人生のひとつとしてこの a life of leisureがある。
   素早くお金を儲けて若いうちに仕事を引退し、バハマにでも行って毎日海を眺めながらトロピカル・ドリンクを片手に浜辺に置いたデッキチェアーに寝ころんで日長な一日を過ごす、というような生活だ。

 今回紹介するJ・J・コノリーの作品『Layer Cake』にも、そうそうに仕事を引退したいと願っている主人公が登場する。

 物語の最後まで名前が明かされない主人公はいま29歳。30歳で仕事から足を洗い、気楽な人生を送るという生活設計を建てている。しかし、彼が考えているように上手く話が進むのだろうか。なんといっても、主人公は麻薬を密売するイギリスの暗黒社会に属しているのだから。

 ある日、主人公はマフィアのボスに呼び出され知り合いの娘の行方を探すように頼まれる。ボスの言い方は、もし彼が上手く探し出せば仕事から足を洗っても文句をつけないと言っているように聞こえる。主人公に選択の余地はなく、彼は早速娘の行方を追い始める。

 しかし、話はここからややっこしくなる。これまで取引をしていた一味から、エクスタシー(MDMA)の錠剤200万錠を売り裁いてくれと主人公チームに依頼がくる。退職金としては申し分ないと主人公と彼のチームは買い手を探す。

 しかし、この200万錠のエクスタシーは、取引一味がアムステルダムのネオナチ・ギャングから強奪したもので、その時取引一味は主人公たちの名前を語っていた。そしていま、主人公たちがイギリスでその錠剤の買い手を探している。どう見ても強奪をしたのは主人公たちに見える。主人公たちはネオナチ・ギャングからも目をつけられる。

 そうして、ボスの知り合いというのがビジネス界の黒幕的存在で、200万錠のエクスタシーの話を聞き、それを日本に送ろうと目論む。

 イギリスを舞台にしたこの物語は、ときにはコミカルにときにはシリアスに話が展開していく。

 それにこの本に出てくる英語は「Who the fuck is this Freddie geezer anway?(そのフレディとかいう野郎は一体誰なんだ)」という風にイギリスのストリート英語が使われている。そうかと思えば、お互いに「ミスター」を付けて呼び合うなど、イギリス人ならではの可笑しさもよく描かれている。

 映画にもなっているこの作品。時間を忘れる面白さだ。


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