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2012年07月20日

『The Traveler』John Twelve Hawks(Vintage Books)

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「果てしなく続く「善」と「悪」との戦い」

 アイザック・ニュートン、イエス・キリスト、ジャンヌ・ダルクなど人類の歴史を大きく変えた人物たち。彼らはみんなトラベラーだった。
 スリラー作家ジョン・トェルブ・ホークスの『Traveler』(トラベラー3部作の第1作目となる)は果てしなく続いてきた「善」と「悪」の戦いをテーマのひとつとに据えて、その戦いをSF、サイコスリラー、アドヴェンチャーの手法を用いて描いた大型娯楽作品だ。ストーリーの展開は、日本でも人気となった『ダ・ヴィンチ・コード』と超人気映画『スターワーズ』を合わせたような感じだ。

 主人公となるのはロンドンに住む26歳の女性マヤ。彼女はハーレークィン一族の血を受けついでいる。

 ハーレークィンは、自分の命もかえりみず代々トラベラーたちを守ってきた戦士の家系で、マヤも子供の頃から父親にハーレークィンとしての戦う術を伝授されてきた。

 一方、すべての人間をコントロールし、絶対的権力を手中に収めようとしてきたのがタビュラと呼ばれる一族。デジタル化が進んだ世界では、インターネットやGPSのテクノロジーを通じて個人の情報が簡単に手に入り、偽の情報を流すことも容易だ。タビュラは人々を監視し、情報操作を思いのままにすることでその権力を手に入れようとしている。つまり、目には見えないテクノロジーの柵を作り、その中で人間を羊のように飼いならそうとしているのだ。

 しかし、トラベラーと呼ばれる一握りの人間は、肉体を地球に残したまま魂をほかの次元を自由に移動させる能力を備えている。その魂の「旅」から得た英知は、これまでも人類の大きな力となってきた。
  
 タビュラにとって、人類を発展させ人間性を呼び起こさせるトラベラーは危険な存在だ。そのため、タビュラはトラベラーをこの世から抹殺してきた。この戦いの歴史のなかで、トラベラーを守る戦士ハーレークィンも数多く命を落とした。

 もうすべてのトラベラーが殺されてしまったとされていたが、アメリカにトラベラーの血を受け継ぐふたりの兄弟がいることが分かる。ハーレークィンとしての身分を捨てて、普通の女性として暮らしていたマヤは、最後のトラベラーを守るためにアメリカに向かう。

 物語は、素早く展開し、コンピューターゲームを思わせるバトルシーンも数多く登場する。また、数々の武器も登場するなかで、マヤが一番頼りとするのは刀であり、トラベラーと共に次元を移動できる武器もやはり刀である。本を読むだけで、ハリウッドの映画を観ているような娯楽性に溢れた作品だ。

 なお、トゥエルブ・ホークスという著者名はもちろんペン・ネームで、この著者はこれまでインタビューを一度も受けたことがないという謎の人物だ。


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