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2012年05月20日

『The Bluest Eye』Toni Morrison(Vintage Books)

The Bluest Eye →bookwebで購入

「トニ・モリソンの最初の小説」

  
 アメリカの都市に住む黒人と、田舎で暮らす黒人の違いに気が付いたのは、ミシシッピ州オックスフォードの町に行った時だった。ニューヨークやロサンゼルスで会う黒人のなかには、いわゆる「ギャングスタ」と呼ばれる暴力と麻薬の匂いがする人々がいた。夜中に道で出会ったりすると少し怖い気がしたことも確かにあった。

 ところが、オックスフォードで会った黒人の人々は、物腰が柔らかく、言葉づかいも(南部特有の訛りはあったけれど)丁寧だった。ふ~ん。土地が変わると人も変わるんだと僕は思った。

 1993年にノーベル文学賞を受賞したトニ・モリソンの処女小説『The Bluest Eye』には、そんな田舎町で暮らす黒人たちが登場する。
  
 本書は1970年に出版されたが、93年にハードカバーがランダムハウスより、そしてペーパーバックがペンギン社のインプリントであるプラムより再発行された。再発行されるとすぐに『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラー・リストに入り、オンライン書店のアマゾン・コムでも売り上げ第三位に入った。

 物語は、11歳になる黒人の少女ピコラとその家族の様子が描かれる。ピコラは父親に犯され、その子供は生まれてすぐに死んでしまう。少女は精神に異常をきたし町の外れでゴミ箱などをあさり細々と暮らしていくというものだ。子供を生む前に、ピコラは自分の瞳の色が世界中で一番真青だったいいのにと願う。瞳が青く、髪が金色なら(つまり白人だったら)自分の醜さが消えて誰もに愛されると想像する。

 本書を読むと、どこかの小さな田舎町に伝わる怖い民謡でも聞かされているような気分になる。

 「昔、少女がひとりいたとさ。青い目を欲しがっていつも泣いていたとさ。おっとつあんの子供を身篭もって、頭がおかしくなったとさ。昔、少女がひとりいたとさ。青い目を欲しがっていつも泣いていたとさ」というような調子だ。

こういう雰囲気が醸しだされる理由は、ピコラ自身が一人称で語っている章がほとんどないせいだろう。物語りはピコラの友人のナレーション、または三人称の形式で進められていく。読み手はピコラの姿は見えるが、彼女の心の動きを直接には知ることができない。


 主人公ともいえるピコラの声が欠如していることは、モリソン自身も93年に書いた後書きで指摘している。

 読み手は、ピコラの人生を供に生きるのではなく、傍観者としてその生き方を見ることになる。だからといって、読み手の共感を呼ばないわけではく、本書が力に溢れた重要な作品であることは間違いない。モリソン・ファンには必読の書だろう。
 


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