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2012年03月28日

『Once upon a Secret』Mimi Alford(Random House)

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「19歳でケネディ大統領の愛人となった少女の自伝」


 今回読んだのは19歳から、ケネディ大統領が暗殺されるまで彼と性的関係を持ったミミ・アルフォードの自伝。

 彼女は、ミス・ポーター校(コネチカット州の名門プレップ・スクール)の校内新聞編集長だった時、ホワイトハウスにジャクリーン・ケネディへのインタビューを申し込む。ジャクリーンもミス・ポーター校出身で、その繋がりでインタビューができると期待したのだ。

 インタビューは断られるが、次の夏、大学生となった彼女はホワイトハウスのプレス・オフィスのインターンとしての誘いを受ける。

 どんな仕事をするかよりも、どんな服を着てホワイトハウスで初日を迎えるかを気にして、1962年の夏、彼女はワシントンDCに向かう。

 そして、インターンを始めてかわずか4日で、彼女はケネディ大統領とセックスをする。彼女はバージンで、それまでボーイフレンドと呼べる男性もいなかった。

 性的、感情的にまだ未熟な19歳の最初の相手が、男性的優雅さと輝きを持ったジャック・ケネディだったらどうなるのか。これは、もう火を見るよりも明らかだ。その夏のインターンが終わり、彼女が大学に戻っても彼女とケネディ大統領との関係は続く。

 彼女はホワイトハウスにあるプールでケネディの取り巻きと遊び、大統領執務室でケネディの髪を直し、ホワイトハウスのメインハウスで密会をし、大統領専用機エアフォース・ワンでヨセミテ公園、ロサンゼルス、パームスプリング、フロリダ、バハマなどに飛びケネディと一緒の時を過ごす。パームスプリングでは、ケネディが宿泊場所として使っていた歌手のビング・クロスビーの家でケネディと会っている。

 これらの場所へケネディはイギリスの首相などに会う公務として出かけている。つまり、ジャクリーンが一緒でない公務の旅にケネディは彼女を連れて行ったのだ。大学の寮の前までリムジンを送り、そこから荷物などは彼女の宿泊先の部屋まで直接届けられた。

 この間にケネディ政権は、キューバ危機を迎え、ベルリン危機を迎えている。彼女はキューバ危機の際にケネディのいつもとは違った様子を感じるが、大統領が国防長官ロバート・マクナマラや国家安全保障担当大統領補佐官マクジョージ・バンディと会議をしている時、ホワイトハウスの2階にあるベッドルームの柔らかい毛布のなかですやすやと眠っていた。また、ドイツ危機の時には、ケネディと一緒にベルリンにいけなかったことを残念に思っていた。

 しかし、ケネディとの未来はないと感じていた彼女は大学2年のときにウィリアム・カレッジに通う青年トニーに出会い、その8カ月後に婚約をする。

 彼女が最後にケネディ大統領と会ったのはニューヨークのカーライル・ホテルだった。ケネディ家はカーライル・ホテルの最上階にデュープレックスを所有している。それが63年の11月15日。そして、ジャクリーンと共に遊説にでかけたケネディは、11月22日ダラスで暗殺されてしまう。

 1月に結婚を控えていたミミは、衝撃のなかトニーに自分とケネディの仲を告白する。トニーは悩んだ末に結婚をすることを決意する。

 それからの離婚、再婚、そしてこの本を書くきっかけとなったデイリー・ニュース紙の記事のことなどが、その後の物語として書かれている。

 この本を読む限り、彼女は普通の東部の良家子女の一員だった。しかし、ケネディとの出会いによってその人生が大きく変わってしまった。ケネディの男としての暗い、冷酷な面も語りながら、彼女は自分の人生を振り返っている。


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2012年03月13日

『Nickel and Dimed 』Barbara Ehrenreich(Picador)

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「アメリカの貧困生活体験談」


   一度読み始め、四十ページほどで読むのを止めてしまったこの本。     本の内容は、生物学の博士号を持ち『タイム』誌にも記事を書き、自著も出版している著者が、いまのアメリカ低所得者の現実を探るため実際に時給七ドルの職につき、ほかからの助けを借りずに生活をしてみるというもの。

 外からの観察ではなく対象となるものを実際に体験して報告するのをパティシペイティング・ジャーナリズムと呼ぶけれども、この本もそれの一種だ。

 著者はまず初めにフロリダ州に赴き、離婚をしたばかりの高卒の中年白人女性として時給二ドル四三セント(チップの収入が別にある)でレストランのウエイトレスの仕事に就く。

 この辺りまで読んで、僕は読むのを止めてしまった。理由は、一九七〇年代の終わりにアメリカに来た僕が最初にやったことがニューヨーク州ロングアイランドでのレストランの仕事だったからだ。慣れない仕事、知らない土地での安いアパート探し、レストランのなかでの人間関係とこの本に書かれてあることはすでに知った世界だった。

 読みかけのページを開いたまま、僕は辛かった最初のアメリカ生活の数年間のことを思い出していた。キッチンの匂い、いつまで経っても終わらない仕事、目の回るほど忙しかった週末。レストランの仕事は僕のやりたい仕事ではなかった。いつになったらレストランから抜け出し、夢のミュージシャンとしてアメリカで暮らせるようになるのだろうかと考えていた。

 昔の自分を思い起こさせるこの本を読み続けるのが辛くなって放り投げてしまった。

 再び読み出した時には、レストランの章をとばし、著者がメイン州で家政婦として働く章とミネソタ州でディスカウント・ストアの大型チェーン店で働く章、それに続くエンディングを読んだ。

 文章はユーモアに溢れ、ワーカーたちの間で友情や敵対心が生まれる様子や、著者の身体の具合、貧困生活を抜け出す難しさなどが書かれてありジャーナリスティックな読み物となっている。

 しかし、何故今でも売れているのだろう。本を買うのはやはり中産階級の人々が多いのだろうか。低所得者は生活が苦しく読書どころではないのかも知れない。僕も当時はアメリカ文学どころではなかった。アメリカの低所得者生活の現実を体験した僕にとって、引き込まれて読む本ではなく、「そうそう。そうなんだよな~」といくらかの息苦しさを感じつつこの本を読み終えた。


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2012年03月02日

『Country Matters 』Michael Korda(Perennial )

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「ニューヨーク編集者の田舎暮らし」


 僕は以前、ロサンゼルスのダウンタウンから車で四〇分ほどの町で一軒家を買ったことがある。その家に、兄と僕のガールフレンドとで二年ほど住んだ。

 家は、しょっちゅうどこかが壊れ、僕たちは毎週のように業者を呼んだり、自分たちで修理をしたりしなければならなかった。

 お湯を沸かすボイラーが倒れ、天井が雨漏りし、ガレージのドアか開かなくなり、セントラル・エアーコンディショニングのファンが壊れ、フェンスが倒れ、庭の木が腐り抜かなくてはならなくなり、バスタブから水が漏れと際限がなかった。

この家に限ったことかと思ったが、数年前にニューヨーク郊外に家を買ったアメリカ人の知り合いも、「毎週末やらなくてはならないことがある」と言っていたので、きっと同じようなものなのだろう。

 いまはニューヨークのアパートに住んでいるので修理に時間を費やすことも少ない。

 今回読んだのは、ニューヨークの快適なアパート住まいから、田舎に暮らし始めた有名編集者マイケル・コーダの書いた本だ。

 アメリカの大手出版社、サイモン・アンド・シュースターの編集長であるコーダは、ニューヨークの知識エリートのひとりであり、都会的なイメージがあったが、二十数年間、週末は田舎の農場で暮らしていたのだ。知らなかった。

 彼が農場を買った場所は、アップステート・ニューヨークと呼ばれる、マンハッタンから車で北上すること一時間半くらい離れたダッチェス郡だ。

 彼の買ったこの農場というのが凄い。建てられたのが一七八五年というから築二〇〇年を超えている。雨漏りはもちろん、どんなにヒーターをたいても温まらない部屋があり、水道管は凍り、汚水処理タンクが詰まる。

 しかし、モデルでもある彼の奥さんのマーガレットはイギリスの田舎育ちで、この農場生活が気に入り、馬を飼い始める。

 そしてコーダ夫婦が豚を飼い始めるに及んで、町の人々も彼らを地元の住人として受け入れる。豚まで飼えば、ここでの暮らしも、もう都会のエリートのお遊びではないという訳だ。豚を飼い始めることが地元住人であることの証しとコーダは言っていてなにか可笑しい。

 この本は、田舎の暮らしがいかにのんびり楽しいかを描いたものではない。家の修理と言えば、電気の球ぐらいしか変えたことのなかったコーダが、悪戦苦闘しながら田舎の農場生活を乗りきり、いかに地元の人々との繋がりを深めていったかの物語だ。

 登場してくる人物はアメリカ北東部の田舎の文化を代表するような人々が多い。多少排他的であり、昔からの自分たちのやり方を頑固に守る。コーダはそんな住人たちをユーモアを交えて紹介している。

 コーダ自身の筆による挿し絵もついていて楽しい。


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