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2012年01月13日

『Coraline』Neil Gaiman(Harpercollins Childrens Books)

Coraline →bookwebで購入

「扉の向こうの不気味な世界」


 僕は、日本の高校を卒業してすぐにアメリカに住み出した。初めは兄とふたり暮らしをしたのだが、問題は部屋探しだった。ニューヨーク州ロングアイランドの小さな町で部屋を見つけようとしたのだが、その時、不動産屋の人が見せてくれた家が、何故かどれもとても大きかったのだ。

 いまでも、どうしてあんな大きな家だけをみせてくれたのか分からない。もちろん、そんな大きな家に兄とふたりだけで住む経済的余裕などないので、大きな家の一部を借りることになる。僕たちの借りた部屋は、一軒家の半地下だった。半地下といっても部屋が6つもあった。一階にはほかのアメリカ人家族が住んでいた。

 部屋のキッチンには上の階に続く階段があり、階段の先にはしっかりとした木製の扉があった。その扉には鍵がかかっていた。

 その部屋には2年間住んだが、階段の扉が開いた時が一度だけあった。

 その日は兄の誕生日で、僕たちは友人を集めて大騒ぎをしていた。夜の12時を過ぎた頃、階段の扉が開き、上の家族の父親が「静かにしろ!」と怒鳴り込んできたのだ。

 僕たちは「分かった」と言ったものの、佳境を向かえたパーティをお開きにしようなどとは思いもしなかった。それから数十分後、入口の扉にノックの音が響いた。扉を開けると、図体のでかい警官がふたり立っていた。結局、その夜のパーティは強制的に終わりにさせられた。

 今回、読んだのは日本でもファンが多い作家ニール・ゲイマンの『Coraline』。大きな一軒家にほかの人々と暮らしている家族の話だ。そして扉が物語のひとつの鍵となっている。この作品はヤング・アダルト、つまり青少年・少女向けに書かれてあり、本には「8歳以上」という表示があった。タイトルのコララインは、家族の一人娘の名前だ。ヤング・アダルトの本だが、大人が読んでももちろん面白い。ファンタジーが好きで英語の本を読んでみたい人にはお勧めの本だ。

 内容を紹介すると、遊びに飽きたコララインが、家にある扉を数えて回るところから物語が始まる。家には14の扉があったが、14番目の扉には鍵がかかっていた。

 その扉の先は煉瓦の壁になっているのだが、しかし、ある日コララインが扉を開けるとそこは別の世界に繋がる通路になっていた。別の世界に住む「もうひとりの母」はコララインを歓迎するが、どうも気味が悪い。

 一度はその世界から逃げ出すが、「もうひとりの母」はコララインを引き戻そうと、魔法の力を使い本当の母と父を自分の世界に閉じ込めてしまう。コララインは母と父を救うべく、再び別の世界に戻り「もうひとりの母」と対決をするという話だ。

 ヤング・アダルト作品とはいえ、怖さも漂うファンタジー映画を観ているような楽しさがあった(ハウルの動く城を連想させる)。コララインを助ける猫や、相手の手先となっている鼠たちなどのキャラクターもいい。

 しかし、開かない扉が開いた時、あまりいいことは起きないようだ。


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