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2011年12月19日

『Three Month Fever : The Andrew Cunanan Story』Gary Indiana(Cliff Street Books)

Three Month Fever : The Andrew Cunanan Story →bookwebで購入

「ゲーリー・インディアナが描いたベルサーチの殺人者」


 1997年7月24日、『マイアミ・ヘラルド』紙は、マイアミ市内にあるマイアムビーチ地区のハウスボート内で、アンドリュ・クナンナンという男が自殺を謀ったというニュースを伝えた。

 アンドリュ・クナンナンはその約一週間前、世界的に著名なファッション・デザイナーであるベルサーチを銃で撃ち殺した犯人だった。
  
 ベルサーチを殺害する前に、クナンナンはすでにミネソタ州でふたり、イリノイ州でひとり、デラウェア州でひとりの殺人を犯しており、FBIから捜査の手がかかっていた。しかし、全米の多くの人々がクナンナンの名前を知ったのは、やはりベルサーチの殺人事件からだった。
  
 人々の興味をそそったのは、殺人者がまだ若く、頭がよさそうなハンサムなゲイの青年だったことだ。「彼はエイズに罹っていた」、「以前からベルサーチを知っていた」など憶測によるニュースも伝えられた。
  
 さて、一体クナンナンはどんな人間だったのだろうか。そのクナンナンの姿をニューヨークに住むゲイ作家であるゲーリー・インディアナが描いた。
  
 この本はクナンナンとインディアナという絶妙な組み合わせを味わえる。

 インディアナの他の作品には、エッセイ集である『Let it Bleed』、マンハッタンを舞台にしたゲイ小説『Rent Boy』などがある。

 本書でインディアナはクナンナンを「努力することなしに全ての物を手に入れようとした男」、「みせかけの家柄の良さや財力を示すために、架空の自分を作りあげていった男」として描いている。金持ちの男とヨーロッパ旅行にでかけ、一方、自分の好きな男を繋ぎとめるために金や高価なブランドものの装飾品を男に与える。嘘の名前や経歴を並べたて、本当の自分よりずっと魅力的な自分を作っていったのがクナンナンだ。

 そのクナンナンが殺人を重ね、ついにはベルサーチを殺し、その数日後、自分の命をも断ってしまうまでの物語を、インディアナは自分の視線を通して描いている。

 本書は通常のノン・フィクションとは少し異なる。それはクナンナンが語ったであろう言葉、また取ったであろう行動を、著者のインディアナが想像し自由に書き加えてある点だ。必ず成功するという手法ではないが、インディアナとクナンナンという組み合わせがこの本を読み応えのあるものにしている。
 
 
 
 


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