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2011年09月18日

『Last Light : A Nick Stone Mission』Andy McNab(Atria Books)

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「アンチ・ヒーロー、ニック・ストーンが活躍するスリラー」


 イギリスのスリラー作家アンディ・マクナブはなかなか変わった経歴の持ち主だ。1959年、病院の外に篭に入れられたままの捨て子として見つかった彼は、若くして陸軍に入隊。19歳にして伍長となり、84年にはイギリス特殊部隊SAS(スペシャル・エア・サービス)のメンバーとなった。

 SASの隊員として北アイルランドやドイツで任務を遂行し、91年に起こった湾岸戦争ではイラクに赴き敵地で捕虜になり尋問を受けた。93年に退役し、その後イラクでの自らの体験を書いた本がベストセラーとなり作家に転向。自伝のほかに、英国秘密情報部工作員ニック・ストーンを主人公としたスリラー・シリーズを書き人気作家の地位を築いた。

 マクナブのフィクション作品は、秘密保持の目的で英国国防省が原稿の時点で提出を求め、許可を与えるという。そんな作家はあまりほかにいないだろう。

 今回紹介する本は彼の人気娯楽スリラー、ニック・ストーン・シリーズの第4作目となる『Last Light』。

 この作品でニック・ストーンは上司から要人の暗殺を依頼される。標的となる要人が誰だか分からないまま、ニックは3人のスナイパーと連絡を取り暗殺の準備を完了させる。ニックの合図でスナイパーたちが標的に向けて引き金をひく手はずになっていたが、上司が殺せと伝えた標的はまだ10代の青年だった。

 ニックはスナイパーたちに合図を送ることができず、計画は失敗に終わってしまう。スナイパーたちはその場で全員警官に射殺され、ニックは捕われの身となる。自分を殺せば、隠し持っている暗殺計画の証拠が公表されるとはったりをかまし、命は助かったニックだが、パナマに戻った標的の青年の命を奪えと次なる命令が下される。

 もし、逃げたり失敗したりしたならば、ニックが後見人となっている13歳の少女ケリーの命がなくなる。ニックは、任務を完了させるためにパナマに向かう。

 マクナブのスリラーを一言でいえばリアリズムに徹した作品と言えるだろう。主人公のニックは超人的なスーパー・ヒーローではない。心に弱さを持ち、失敗も犯すアンチ・ヒーローだ。

 ニックはパナマのジャングルのなかを歩き、暗殺の準備をする。しかし、任務の途中で政府の陰謀に気付いたニックは、青年の暗殺を躊躇する。一方で、ニックの存在が相手に知れてしまい、パナマでニックを助ける任務を引き受けた家族ともども、自分たちに命の危険が迫ってくる。

 誰を殺せばこの苦境から逃れられるのか、そして政府の陰謀を食い止めるにはどうしたらよいのか。自分が追われながらにして、相手を追い詰める展開が緊張感を生み出している。


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