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2011年02月28日

『O : A Presidential Novel』Anonymous(Simon & Schuster)

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「作者不明の2012年大統領選を題材にした小説」


 アメリカは来年には大統領選を迎える。すでに選挙に向けてのいろいろな動きが表面化している。民主党は現職のオバマ大統領が2期目を狙うが、問題は共和党が誰を大統領候補として選ぶかにある。

 現在、名前が上がっているのがミット・ロムニー、マイク・ハッカビー、サラ・ペイリン、ロン・ポールなど。ほかに候補となることを狙っているのが、ミシェール・バックマン、シャロン・アングル、クリス・クリスティ、ジョン・ハンツマンなど。

 共和党は内部にティーパーティ運動を支持する極右的支持層を抱え、いかに中道の大衆にアピールする候補者を選出するかという問題がある。

 一方、オバマは今もアメリカ経済の立て直しに苦労し、彼が取った財政出動政策により国の借金も膨らんでいる。

 そんな政治状況のなかで出版されたのが、来年の大統領選を舞台とした小説「O」だ。
この小説を書いた著者が匿名だったことでこの作品は話題となった。

 匿名の政治小説というとクリントンの大統領選を題材とした「プライマリー・カラー」があるが、マーケティングの手法としては同じ手法を使っている。

 さて、内容だが主人公といえる人物はカール・レーガン。それまでのOの再選キャンペーン・マネジャーが女性問題で失脚し、カールはOの再選キャンペーン・マネジャーに就任する。

 物語は、大統領選におけるメディアとの駆け引き、キャンペーン本部内での論点作り、相手を貶める戦いも辞さない中傷合戦など大統領選の舞台裏を見せてくれる。

 物語には、サラ・ペイリン、ハフィントン・ポスト創設者のアリアナ・ハフィントン、大統領上級顧問のイヴィッド・アクセルロッドなど実在の人物だとすぐに分かる人物が登場する。(タイトルのOはもちろんオバマ大統領だ)。

 しかし、実在しないのがOの選挙相手となる共和党大統領候補のトム・モリソンだ。彼は軍隊で輝かしい功績を残し、政治の世界での経験も十分。そのうえ人間としてもりっぱだ。

 彼は選挙戦をきれいに、公平に、相手への尊厳を持って戦うことを決める(いまの共和党員でそんな選挙の戦い方をする人間がいればお目にかかりたい)。

 一方、オバマであるOは、公共のイメージと異なり、自分に酔い、しかし心配性で、トムを恐れながらもうぬぼれている人物として描かれている。

 「 彼は公には決して認めないが、彼の演説家としての才能は一般に考えられているものよりさらに豊かで、稀な才能だと信じている」

 小説はエンターテインメント性もある世界なので、もちろん虚構も許される。アメリカ大統領選の舞台裏を分かりやすく見せてくれる作品として読むならば、価値のある作品だ。



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