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2009年05月13日

『One Fifth Avenue』Candace Bushnell(Voice )

One Fifth Avenue →bookwebで購入

「ニューヨーク、ダウンタウンの住人たち」


 「セックス・アンド・シティ」の著者としてすっかり名をあげたキャンディス・ブシュネル。彼女の最新作はな〜んと『One Fifth Avenue』。何故「な〜んと」かというと、本のタイトルとなっている5番街1番地は、僕のアパートから5分のところにあるビルなのだ。お向かいの5番街2番地には、元ニューヨーク市長のエド・コッチが住んでいる。

 ニューヨークの金持ちエリアといえば、セントラルパークの東側、アッパーイーストサイドだが、僕の住むダウンタウンもまんざらではない。ワシントン・スクエアーの北側から5番街が始まり、その南が僕のアパートがあるグリニッチ・ビレッジ。そのまた南がソーホー、そしてトライベッカと続く。オールドマネーといわれるいわゆる代々お金持ちの名家は少ないが、創造的な仕事をする人たちが数多くいる。

 話は少しそれるが、僕は週日の朝、息子をスクールバスのくる交差点まで連れて行く。その交差点につくまでに、キックスクーターに乗るふたりの兄弟と毎朝すれ違う。弟の方は母親とキックスクーターの二人乗りをしている。僕と息子は彼らをスケーティグ・ブラザーズと呼び始めた。

 ある日、スケーティング・ブラザーズが母親とでなく父親と一緒に学校に向かっていた。その父親が作曲家フィリップ・グラスだった。それから、時々朝にフィリップ・グラスとすれちがうようになった。父親フィリップ・グラスと通うときは、兄はスクーター、弟は歩きかフィリップ・グラスの肩車に収まっている。これはきっと、フィリップ・グラスがスクーターに乗るのを拒んでいるせいだと思う。子供用のキックスクーターに乗るフリップ・グラスというのも、自転車に乗るアインシュタイン風のほのぼのとした感があると思うのだが、それは僕の勝手な思いだろう。

 こう書いてしまえば有名人と出会うことなどなんていうことないようだが、いまでも実際に子供を肩車したフィリップ・グラスとすれちがうのは、どこかうれしいし、ダウンタウンに住んでいる面白さだと感じている。

 フィリップ・グラスの子供が通う学校は僕のアパートの隣にあり、そこは妻によるとデヴィッド・ボウイの子供も通っているという。

 このゴシップを僕に教えてくれたとき、「本当の話、デヴィッド・ボウイの子供って知っていて依怙贔屓しないのは、先生としてむずかしいんじゃない」と妻は夢見るように言ったもんだ。

 キャンディス・ブシュネルの本の話に戻るが、物語は5番街1番地に住むニューヨークきってのオールドマネー、ルイーズ・ホートンが死亡する話から始まる。彼女が住んでいた超豪華な部屋に誰が住むのか、住人たちの関心が集まる。

 登場するのは、コラムニストとしては盛りを過ぎたがまだ社会的にパワフルなエニド・マール。彼女の甥でピューリッツア賞を取った作家フィリップ・オークランド。フィリップは最近テレビの脚本などをやり、いつか再びましな仕事がしたいと思っているが出来ずにいる。

 そしてこのビル理事会の会長ミンディ・グーチとその夫のジェームス・グーチ。ジェームスは文学系作家で以前出版した本は数千部が売れただけだった。ミンディとエニドは歴史的な敵対関係にある。

 そこに現れるのが、ホートンの住んでいた部屋を2000万ドルで買ったポール・ライスと彼の妻アンナリサ・ライス。ポールは数学者でヘッジファンドのパートナーとなっている。初めは仲がよかったポールとミンディはしだいに関係がこじれ「戦争」状態に突入する。ミンディは以前からの戦いの矛を収めエニドと共同戦線をはる画策をする。

 一方、フィリップは22歳のローラを個人的「リサーチャー」として雇うが、すぐに一緒にベッドと共にする仲になってしまう。ローラは、フィリップのアパートと妻の地位を狙う。

 そんな中フィリップの昔のガールフレンドで女優のシーファー・ダイアモンドがテレビの仕事のためにハリウッドから5番街1番地に戻ってくる。

 そしてローラはウェブサイトのブロガー、サイヤー・コアと知り合う。第2のスコット・フィッツジェラルドを目指すサイヤーはローラからの情報を使い、暴露ストーリーをブログに書き始める。

 そして、作家としてやっと成功しそうなジェームス(憶えていますか?ミンディの夫です)がローラを欲するようになる。

 これだけでも十分だが、5番街1番に住む住人たちをとりまく出版社社長、ヘッジファンド社長、身に付いた洗練さを武器に彼らに助言を与える役どころの男性などが登場し、物語を作っていく。

 これらの登場人物たちが、様々な人生劇を展開し、ニューヨークに住む楽しさ、悲しさ、滑稽さ、華々しさ、醜さをみせてくれる。

 スリルとサスペンスではなく、状況の複雑さと心の動きを描き出すブシュネルの最新作は
大人向けエンターテインメント作品だ。




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