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2009年04月29日

『The Book of Fate』Brad Meltzer(Grand Central Pub.)

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「大仕掛けのスリラーを読む醍醐味が味わえる作品」


 面白いスリラーというのは、一度読み始めたらなかなか本を離すことができない。今回読んだのはブラッド・メルツアーの『The Book of Fate』。

 ペーパーバックとはいえ600ページある作品なので、読み応えがある。

 本を片手にベッドからカウチ、床にも寝転がり読み続ける。ペーパーバックのなかでもマスマーケット版と呼ばれる小振りの本なので、仰向けになりながら読んでも手が疲れることはない。しかし、文字が小さいので目が疲れる。

 いい加減なところで辞めようと思うのだが、物語の早い展開と繰り出される謎の数々で気持が高ぶり、次の章まで、いやもうひとつ先の章までと読み続けることになる。

 物語の方とはいうと、主人公はアメリカ大統領の元補佐官ウェス・ホロウェイ。

 8年前、当時大統領だったレランド・マニング一行はカーレース場で暗殺事件に逢い次席補佐官であるボイルが死亡。ウェスも跳弾を受け、片方の頬が動かなくなる傷を負う。

 ウェスは、2期目の選挙で敗退したマニングのもとで以前と同じように彼の身の回りの世話をする役目を務めていた。マレーシアでスピーチをするマニングに同行したウェスは、そこで死んだはずのボイルと遭遇する。

 何故ボイルが生きているのか。ボイルが生きていることをマニングは知っているのか。あの暗殺はマニング自身が仕掛けたものなのか。もしそうだとしたら、マニングは10年近く忠誠を誓ってきた自分を裏切っていたことになる。何故、マニングは暗殺劇まで使ってボイルを死人に仕立て上げる必要があったのだろうか。

 事件はここから急展開をみせ、CIA,FBI,シークレットサービスを巻き込み、フリーメーソンの歴史、第3代大統領トマス・ジェファーソンが用いた暗号など次々と謎が深まっていく。

 登場人物もゴシップ・コラムニストのリスベス、アメリカ政府に情報を売る謎の人物ザ・ローマン、その後ろにいるといわれるザ・スリー、 精神を病んだスナイパーなど多彩だ。

 大仕掛けのスリラーを読む醍醐味を満喫できる作品だ。



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2009年04月21日

『Handle With Care』Jodi Picoult(Atria Books)

Handle With Care →bookwebで購入

「家族の愛の形を考えさせられる作品」


 僕の通ったマサチューセッツ州の大学では、2年生から3年生にあがるとき論文ライティングの技能試験があった。大きな講堂に集まり、渡された命題と資料をもとに論文を仕上げるというもので、回答時間は確か2時間だった。

 その試験の命題は決まってモラル的に選択が難しいもので、資料の方は新聞記事や誰かの論文だったりした。命題は例えば、死刑を存在さすべきか廃止すべきか、延命措置の解除はいかなる状況で正当となるかなどだった。

 今回読んだニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーリスト第1位となった『Handle With Care』もそんなモラル的選択の難しさを読者につきつける作品だった。

 物語の中心となるのはオキーフ一家。家族構成は、警察官のショーン、以前はケーキ職人をしていたがいまは専業主婦のシャーロット、長女のアメリア、そして次女のウィローの4人だ。

 この家族の抱える問題は、次女のウィローが先天性の骨粗しょう症で、生まれる以前にすでに7カ所の骨折があったことだ。

 「最初の7カ所はまだあなたが産まれる前、次の4つは産まれてから数分のうち。そしてその病院で蘇生中にまた9カ所」。この文章に心が痛んだ。

 その後もシャーロットの骨折は続き、寝返りを打つだけでも骨折する彼女は、5歳までにすでに大腿骨を含む30回を超える骨折を経験する。

 物語が始まってすぐに家族はフロリダ州のディズニーランドに出かける。楽しみにしていたバケーションだったが、ウィローが床に落ちていたナプキンに足を滑らせ骨折してしまう。病院に運ばれ、X線で多くの骨折の形跡を発見した医者は幼児虐待の疑いがあると警官に連絡し、その結果シャーロットとショーンは逮捕され、アメリアは養護施設に送られる。

 ウィローを看ている掛かり付けの医師と翌日に連絡が取れ、家族は再び一緒になるが、怒りが収まらないショーンはフロリダ警察を訴えようと弁護士のところにいく。

 この弁護士との話し合いが物語の大きな転機となる。弁護士は出産を担当した産科医を訴える道があることを示す。しかし担当産科医は家族同士のつきあいがある女性であり、その上訴訟となった場合はウィローの病気を事前に知っていたらウィローを中絶したはずだと証言しなければならない。

 だが勝訴すればその多額のお金を使ってウィローの将来を安定させることができる。家族はすでに経済的に苦しく、いつか彼女を支えきれなくなることは目に見えている。

 ウィローが産まれてこなかった方がよかったと証言するか、彼女の将来に不安を残したままの生活を続けるかの選択を迫られた家族は大きくきしみ始める。
 
 裁判は母親が原告側、父親が弁護側に別れ争われ離婚の危機さえ向かえる。長女は自傷行為に走り、家族は崩壊の一歩手前まで追いつめられる。

 家族の愛とは何か、なにが正しい道なのかを考えさせられる作品だった。



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