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2009年01月29日

『Descartes’Bones :A Skeletal History of the Conflict between Faith and Reason』Russell Shorto(Doubleday)

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「デカルトの頭蓋骨をめぐる奇妙な歴史」

「我思う、ゆえに我あり」。
フランスの哲学者デカルトの言葉だが、いまこの言葉を聞いて衝撃を受ける人はまずいないだろう。どこか記憶の片隅に留められている言葉であり、この言葉により自分の生き方が変わったという人もとても少ないと思う。

しかし、すべての事象が神の存在と深い関係にあった17世紀の西洋社会では、デカルトのこの言葉は実に衝撃的であった。

デカルトのこの言葉は、すべてのことに疑いを持ち、絶対に確かだといえることだけを見つけだそうとする科学的な思想の表れだと考えられている。

「我思う、ゆえに我あり」をほかの言葉で言えば「考えが進行している、ゆえに考えている者がいるはずだ」ということになる。つまり、思考をしている者の存在は、思考している事実ゆえに確かなものだという考えだ。これは、当時の社会のありかたを変える革新的な哲学だった。自分でたしかめられる確かなことだけを信じるこの「方法」により、科学、医学が発展し、王制が倒れ、西洋文化が発達した。

今回読んだ本は、デカルトの死後彼の頭蓋骨が辿った奇妙な運命を追いながら、彼の思想が社会に与えた影響を探ったものだ。

デカルトは1650年2月スウェーデンのストックホルムで死んだ。しかし、偉大な哲学者を祖国に戻そうと、死後16年後の1666年に遺骨が掘り出され、コペンハーゲンを経由してフランスに送られた。その後もフランス国内で安置場所が数回変わっている。

1800年の初め3度目の遺骨掘り起こしが行われ、科学者たちは遺骨にデカルトの頭蓋骨が含まれていないことを確認した。
デカルトの頭蓋骨についての話はこの時点から科学の発展の領域を外れ、推理小説の域の物語になっていく。

デカルトの頭蓋骨は1666年、最初に掘り出された後、フランスに渡らずスウェーデンに留まった。それは、衛兵士官プランシュトレームなる者が頭蓋骨を盗んだからだった。19世紀になってスウェーデンの有名な化学者ベルツェリウスが競売に出されたデカルトの頭蓋骨の存在を知り、頭蓋骨を競り落としたカジノのオーナーから買い戻した。

最終的にはフランス国立自然史博物館の比較解剖学の教授キュヴィエを介してフランスに返還されるのだが、それ以前に頭蓋骨は最低でも7人の手に渡った。そして頭蓋骨の持ち主たちは、自分の名前を骨に刻み、ラテン語の詩も刻み付けた。

「ストックホルムにあるオールドタウンの外れに4階建ての建物がある。それは、活気にあふれ、喧噪としたバロックと呼ばれた時代に建てられたものだ」という出だしで始まる物語は約350年間に渡る奇妙な歴史ストーリーだった。



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2009年01月09日

『Time Traveler : A Scientist's Personal Mission to Make Time Travel a Reality』Dr. Ronald L. Mallett(Basic Books)

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「タイムマシンの作り方」


 「想像力は知識よりも大切だ。知識には限りがあるが、想像力は世界を巡る」

 アインシュタインの言葉だ。

 このアインシュタンの言葉のように、人々の想像力をかりたてる研究をしている博士がいる。それがコネチカット大学教授ロナルド・マレット博士だ。彼の研究対象というのが、な〜んとタイムマシンなのだ。

 しかしタイムマシンと言っても、荒唐無稽な話ではない。マレット博士のタイムマシン理論はアインシュタインの相対性理論を土台にしたもので、この機械を本気で作ろうとする組織がマレット博士を中心にコネチカット大学に設けられ、研究が進んでいるのだ。

 この本は過去への旅の可能性を科学的に証明した理論を発見したといわれる理論物理学者のマレット博士のメモワールだ。

 過去のあの時に戻ることができたなら、今度は違うやりかたで人生をやり直してみたい。過去に戻ることができるなら、愛する人の人生をよりよいものにしてあげたい。そんなことを誰でも一度は考えるだろう。

 マレット博士は10歳のときに父親を失ってしまう。愛する父親を亡くしたマレット博士は失意のなかに一筋の光を見つける。それがタイムマシンだった。H・G・ウェルズの本を読みタイムマシンという時を巡る機械に魅了され、いつかタイムマシンを開発し過去に遡り、父親に煙草をやめ今すぐ病院にいくように忠告し父の命を救いたいと強く願う。

 彼はタイムマシンの開発を胸に理論物理学者への道を進んで行く。しかし、黒人である彼は同僚の学者や社会から「変人」のレッテルをはられるのを恐れ、本当に信頼した人物にしかタイムマシンの話をしない。

 「私がタイムトラベルに興味を持っていることを話さないのは合理的な理由によるものだった。私の所属する学部の中からも外からも変人というレッテルをはられない方がよかった。」とマレット博士はこの本で語っている。

 しかし、アインシュタインが言うように本当に大切なものは知識よりも想像力だ。

 マレット博士は優れた理論物理学者であり、論文も数多く発表しコネチカット大学の教授となる。その後、彼は遂に過去への旅が可能であることを示す理論を確立し、物理学界に発表をする。

 最近では、スパイク・リー監督がこの本の映画化を発表し注目を集めた。映画化により、マレット博士の研究がさらに人々の関心を集めるのは間違いないだろう。



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