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2008年10月20日

『McMafia』Misha Glenny(Alfred a Knopf)

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「裏社会の経済グローバル化」


 ニューヨークにいる僕のところに時々おかしなメールが送られてくる。送り主はアフリカに住むという人からだ。彼あるいは彼女は、アフリカの大富豪または王の息子や妻ということだ。最近父または夫が死んでしまい莫大なお金を残した。しかし、政治的事情からそのお金を受取ることができない。莫大な財産を当局から不当に没収されてしまう前にアメリカに移したいが、自分名義の口座では送金が不可能だ。その苦境を救って欲しいという依頼だ。

 移すお金は数百万ドルで、もし名義を貸してくれたら、そのお金は僕の手助け無しには受け取れないものなので、半分ずつにしようと送り主は言う。

 これはもちろん詐欺メールだ。話に乗ると、書類の手数料だとか銀行への手数料だとかで何万ドルも取られてしまう。

 この種のメールは、なかなか格調高い英文で書かれてあり、その文を読むのはおかしな喜びがある。

 僕のところに届くものはナイジェリアから発生した詐欺「419詐欺」(ナイジェリアの刑法番号からこの名前がついた)の変形したものだと、今回読んだ『McMafia』で知った。

 アメリカでの最近のベストセラーに経済のグローバル化を語った『The World is Flat』があるが、『McMafia』は裏の経済、つまり犯罪のグローバル化を語った本だ。

 著者は『The Fall of Yugoslavia』などの優れた本を書いた英国のジャーナリスト、ミーシャ・グレニー。彼によると犯罪グローバル化の始まりは旧ソ連の崩壊にあったという。

 旧ソ連の崩壊によりそれまで社会主義経済傘下にあった国々はそれぞれ民主化の道を進むことになった。

 多くの国はそれまで政府の組織内にいた秘密警察関係者や諜報員、国境警備隊、それに警察官などの大量解雇をおこなった。それらの国々の経済状態はよくなく、解雇された人々を雇い入れる受け皿はなかった。いく道を失った諜報、密輸、殺人、脅迫、情報組織作りのプロたちがそのまま組織犯罪の道に進んだのだ。

 また、自由経済に移った新たな体制のもとでは合法と違法の境がはっきりとせず、国も犯罪を取り締まる経験や資金もなかった。

 このような環境のもとで犯罪のグローバル化が急速に進んだ。なかには国家や政治家と結びつき、マフィア組織なのか正規のビジネス組織なのか区別がつかない大規模なものまで登場するようになった。

 この本では、東ヨーロッパでの売春取引や車の窃盗、カザックスタンでのキャビア・マフィア、カナダのマリファナ組織、中国の人身売買、日本のヤクザ組織、そしてナイジェリアの詐欺のことなどが、社会的、政治的、経済的背景などとともに語られる。

 「彼らはシェル石油、ナイキ、マクドナルドなどと同じように海外のパートナーを求めた」とグレニーは述べている。

 裏の経済の世界でも新たなグローバル化の波が押し寄せているのだと分かる本だ。



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