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2008年09月26日

『Stuff White People Like : The Definitive Guide to the Unique Taste of Millions』Christian Lander(Random House)

Stuff White People Like : The Definitive Guide to the Unique Taste of Millions →bookwebで購入

「白人の好みってのはどうなっているのだろう」


 日常に少し疲れを感じ、寝転びながら気楽に読める本が欲しくなった。そんなときに買ってみたのがこの『Stuff White People Like』だった。ニューヨーク・タイムズのノンフィクション部門ベストセラーリストに入ったときから面白そうだな〜と思っていた本だ。人気ブログ・サイト「Stuff White People Like」から派生した本でもある。

 内容はアメリカに住む白人人口が好むものを挙げて、ユーモラスな解説をつけている。白人が好むものとして選ばれているものは、統計学的な根拠はなく著者クリスチャン・ランダー(彼も白人だ)の個人的な観察によるものだ。

 150にのぼる項目がエントリーされているがどんなものがあるか少し紹介してみよう。

 ブランチ:ブランチとはご存知のとおり、休日に取る朝食(ブレックファースト)と昼食(ランチ)兼用の食事。休みの朝少しゆっくり目に起きて、時間をかけて食事をとるというもの。本ではだいたい9時半頃におき、アウディかボルボに乗り友人がいる近くのブランチメニューを出しているレストランに出かけるという。ブランチを友人と食べることは、白人たちにとってその週の大きな目標だという。白人のルールでは、前の夜にクラブなどで出会ってその翌朝一緒にブランチをするのは男女関係や友人関係の始まりの印であるという。

 留学:自分が身につけるバランスが取れた教育の一貫として、アメリカに住む白人は海外での滞在学習が欠かせないと考えている。留学生活の典型的な物語は、例えば次のようなものだ。オーストラリアに着いたが、誰も知り合いがなく、初めてバーに行った夜に沢山の友達を作る。オーストラリア以外の国からきた異性と短いロマンスを経験するが、留学から学んだものは何もなかった。しかし、ローカルの食べ物が好きになり、自国に戻ってその食べ物が手に入らないことの文句をみんなに言う。留学先はヨーロッパやオーストラリアが基本だが、アジアや南アメリカが次のレベルとなり、チベットやアフリカに留学すれば最も注目を集めることができるという。

 夢を追うこと:白人は自分の夢を追っている人間は、成功するチャンスがどうであれ支援をするように教育されている。そして自分も夢を追う。白人はどんな失敗をしても、社会のなかで衣食住に困らない状況にあるため可能なことだ。通常、白人は18歳から25歳くらいまで自分の夢を追い求める。この時期、例えば作家になるためにブルックリンに引越しをするような行為に反対する友人や親はいない。多くの白人は夢やぶれ、通常5年以内に弁護士になるため法科大学院に入学するなど現実の世界で生きることを始める。歳をとって忘れていた夢を追い始める白人もいるが、それがどんなに危うくとも「自分の夢を追う」のであれば周囲の白人はその行為を支援しなければならない。

 このように、挙げられた項目も面白いが、約1ページの分量でつけられている解説が楽しい。白人というグループを一集団として見て、そのグループに多く共通する事柄を、多少の皮肉も込めてユーモラスに述べている。

 この本に挙げられているこのほかの項目には「コーヒー」「アジア系女性」「ラストネームを2つ持つこと」「日本」「寿司」「ニューヨーク・タイムズ紙日曜版」「家の改装」などがある。

 どこから読み始めてもよく、テーマも軽くしかし社会学的な楽しさもあり、なにより気楽に読めた。楽しく洋書を読みたいと思っている人は、この本を手に取ってみるといい。




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2008年09月16日

『Hell’s Angel: The Life and Times of Sonny Barger and the Hell’s Angels Motorcycle Club』Ralph “Sonny” Barger(HarperCollins Children’s Books)

Hell's Angel: The Life and Times of Sonny Barger and the Hell's Angels Motorcycle Club →bookwebで購入

「ヘルズ・エンジェルズたちの軌跡」


 僕はこれまでにアメリカ大陸を三度車で横断した。どの横断も約一週間で達成したので、早い方だと思う。この三度の横断が旅行や遊びではなく、すべて引っ越しだったので時間的に余裕がなかったのだ。

 アメリカの文化のひとつに車文化というものがある。車で一日じゅうアメリカを移動していると、フリーウエイを走る自由さ、その日の長いドライブを終えモーテルに泊る時に込み上げてくる心細さと達成感の混じった感覚など、なかなか甘酸っぱい感情が味わえる。

 アメリカにはオートバイ文化というのもある。モーターサイクル・クラブであるヘルズ・エンジェルズに代表される、車文化よりさらに自由で、危険で、個人のかかわり合いが強い、暴力的な文化だ。

 残念ながらというか幸運にもというか、僕にはエンジェルズの友人はいない。しかしアメリカのバイク文化には前々から興味があった。エンジェルズは60年代、70年代はもちろんいまでもカウンターカルチャーの一核をなす集団だ。

 そのクラブ名は、ローリング・ストーンズがアメリカツアーのあとにファンのためカリフォルニア州オルタモントで開いた野外フリーコンサートでの殺人事件で日本でも広く知られるようになったのではないかと思う。コンサートの群衆整理要員として雇われたエンジェルズのメンバーが、ストーンズが『アンダー・マイ・サム』を演奏するなか黒人青年を殺してしまったのだ。

 この事件はラブとピースを唱えていたヒッピーたちに大きな衝撃を与えた。ヒッピー文化終焉の始りともいえる事件だった。この時のストーンズのアメリカツアーのことや当時の世相については、ツアーに同行したジャーナリスト、マイケル・ライドンの著作『Flashbacks』(ISBN: 9780415966443)に詳しい。
 
 今回紹介するのはヒッピーの話ではなく、ヘルズ・エンジェルズの話だ。著作はエンジェルズのカリフォルニア州オークランド支部を設立し、クラブのリーダーとされていたラルフ・バーガー(通称ソニー・バーガー)が書いた『 Hell's Angel: The Life and Times of Sonny Barger and the Hell's Angels Motorcycle Club』。エンジェルズ創設期の出来事、文化、決まりなどが分かり、興味深い。

 例えばエンジェルたちはみな自分が所属するクラブの地名が入ったパッチをジャケットの背の部分に縫い込んでいる。その他にも、どくろと翼をモチーフとしたヘルズ・エンジェルズのマークを縫い込んでいる。このマークはデス・ヘッドと呼ばれる。デス・ヘッドは誰でも勝手に付けられるものではなく、各メンバーの所属する支部から支給され、所有権はメンバーではなく支部に帰属している。


 エンジェルズにとってデス・ヘッドはいかなる事態でも死守するもので、もし誰かがデス・ヘッドのついたジャケットを取られでもしたらその支部のメンバー全員で取り返しにでかける。エンジェルズのメンバーとなるためには、全員の賛成が必要で、反対がひとりの場合は、何故反対なのかを聞きもう一度投票をするが、反対が二票を超える時はどんな理由でもメンバーとなることができない。

 また、メンバーとなる候補者はプロスペクトと呼ばれ、プロスペクトとなった者はクラブへの忠誠を示すために法に触れる行為もする、などというエンジェルズのルールをこの本で知った。

 そのほか、この本にはエンジェルズと警察の戦いや、六〇年代の学生運動家とエンジェルズの関係なども書かれている。

 ちなみにヘルズ・エンジェルズは正式な会社組織となっており、マークや名称などの著作権はすでに登録されている。

 エンジェルズの支部はヨーロッパやオーストラリアにあるが、日本にはない。やはり人種のせいだろうか。

 アメリカのバイク文化を知るにはいい本だ。

 



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