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2008年08月29日

『What Happened : Inside the Bush White House and Washington’s Culture of Deception』Scott McClellan(Public Affairs )

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「報道官が伝えるブッシュ政権の闇」


 この本の著者はスッコット・マクレラン。2003年から2006年まで今のブッシュ政権で報道官を務めた人物だ。アメリカの政治ニュース好きである僕にとってはテレビでお馴染みの人物だ。

 2005年にニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの時も、ヴァレリー・プレイム・ウィルソンの著作『Fair Game: My Life As a Spy, My Betrayal by the White House』で話題を集めたCIA工作員名の漏洩事件の時も、政権の正当性を主張するだけで、政府には何の落ち度もやましさもないと言い続けるマクレランを時には憎々しく思ったものだ。

 その彼が書いたブッシュ政権批判の著作がワシントン・DCを賑わせたのだから皮肉なものだ。この本は今年5月の出版と同時にニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー・リストの上位につけ全米レベルでも話題を読んだ。

 ブッシュがまだテキサス州知事だった時代からの側近のひとりだったマクレランだが、この著書ではブッシュやブッシュ政権内に何が起こっていたかを書いている。

 「必要のない戦争に臨んだのは重大な過ちだった。しかし、ブッシュ政権内で起こったすべてのことを思い起こすと、それよりさらに重大な根本にかかわる過ちをブッシュ政権は犯した。それは誠実さや正直さといった資質が最も必要な場面で、それに背を向ける道を選んだことだ」

 この本はブッシュ政権がCIA工作員名の漏洩事件に巻き込まれるところから始まるが、その後時代がさかのぼりマクレランの大学時代や彼の母(テキサス州オースチンの市長)のことが語られる。そうして、そこから長いブッシュとの関係が綴られていく。

 これまでブッシュ政権にいた多くの人物が回想録を書いてきたが、この本はマクレランというブッシュに忠誠を誓ってきた数少ないロイヤリストが著したことで注目に値する。

 本が出版されて様々な意見が交わされた。「彼は政策を作ってきた人物ではなくスモール・プレーヤーに過ぎない」「センセーショナル性を狙っただけの取るに足らない本」などと否定的な意見も数多く聞かれた。

 しかし、8年間のブッシュ政権のあとでは、ブッシュ政権が裏で糸を引いて否定的な意見を言わせているのではないかと疑ってしまう。メディアを使い政権に批判的な者の信頼性を貶めるという手口は、ブッシュ政権が得意とした手法だったからだ。

 悪意と不透明さ、そして攻撃。これがブッシュ政権のやり方の一部だったことは間違いない。その方法を選んだことでブッシュが失ったものは、マクレランが言うように政権への信頼性だった。



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2008年08月16日

『Thriller: Stories to Keep You up All Night』James Patterson (Editor)(Mira Books)

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「スリラー好きの人々・・・今宵はふるえて下さい」

 
 アメリカある「国際スリラー作家協会(ITW)」をご存知だろうか。

 二〇〇四年にアリゾナ州においてアメリカで初めてとなる、スリラー作家だけの会合が開かれた。この会議の最終日、主催者や作家たちからスリラー作家を束ねる組織を作ったらどうだろうという声が上がった。こうして出来上がった組織が「国際スリラー作家協会(ITW)」だ。
 
 アメリカでは、スリラー作家のための組織はこれまでに無く、組織の設立者たちは早速、多くのスリラー作家に入会を勧めるメールを送った。反応は素晴らしく、すでに四〇〇名を超えるメンバーがいる。ITWはすぐにウェブサイト(www.thrillerwriters.org)を立ち上げ、デラウェア州で正式な登記も済ませた。
 
 そのITWの企画によるスリラー・アンソロジーが、今回紹介する『Thriller』だ。バーンズ・アンド・ノーブルの資料によると、スリラー作品だけに限った短編集はこれまでなかったという。
 
 このアンソロジーには、ゲイル・リンズ、デニーズ・ハミルトン、ジョン・レスクワ、リー・チャイルド、デイヴィッド・マレル、マイケル・パーマーなどそうそうたるスリラー作家の作品32編収められている。ページ数はな〜んと600ページ近く。スリラー中毒者にはこの作品の多さが魅力だろう。

 この本のもうひとつの魅力は、人気作家であるジェームズ・パターソンが編集を担当していることだろう。

 32編は、すでに各作家の作品のなかで以前に一度登場した人物を主人公とするか、発表された物語を引き継ぐ形のストーリーとする、という枠のなかで書かれている。その結果、新たな短編といえども、ファンの読者にとっては、どこかで繋がりのある作品を読むことができる楽しみがある。

 また、すべての作品にはパターソンによる簡単な紹介文がつけられている。作家の経歴を含め、今回登場する主人公がどんな設定のなかで描かれてきたかを知らせてくれる彼の紹介文を読めば、すんなりと作品に入っていくことができる。かなり親切な本作りとなっている。パターソンさんご苦労様。

 ひとつの作品は15ページから20ページ程度なので、快適に読み進めていくことができる。

 リーガル・スリラー、メディカル・スリラー、ロマンティク・スリラー、政治スリラー、宗教スリラー、それに軍事スリラー。ありとあらゆるスリラー・ストーリーのなかで、誘拐が行なわれ、殺人事件が起き、脅迫が繰り返され、金が飛び交う。国際的な暗殺請負人を父に持った娘、嵐のフロリダで連続殺人犯と出会ってしまう夫婦、放火事件を起こし警察に追われる男が、途中で違う人間になりすます術を教えてもらう話など、どの物語もたまらなく面白い。

 「So prepare to be thrilled. And enjoy the experience(ではぞくぞくさせられる準備をして、物語を楽しんでください)」とパタースソは締めくくっている。

 2009年7月、ITWは僕が住むニューヨークでスリラー作家と出版界、それにファンが集う大きな催し「ThrillerFest 2009」を開催する。



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