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2008年03月01日

『The God Delusion』Richard Dawkins(Mariner Books)

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「ドーキンスにとって神は存在しない」


ノーム・チョムスキー、スティーヴン・ホーキング、ウンベルト・エーコなどと並ぶ頭脳の持ち主であるリチャード・ドーキンス。オックフォード大学に所属する進化生物学者でもある。

彼の『The God Delusion』は興味深い本だ。この本は、生物学の本ではなく無神論者の彼が、「神」は存在しないばかりではなく、「神」の教えに従う宗教は人類にとって危険であり有害でさえあると説いたものだ。

『Selfish Gene』や『The Blind Watchmaker』など名著といえる本を著してきたドーキンス。僕はボストンで大学生をやっている頃、遺伝学のクラスで彼の本を知り、以来彼の本を数多く読んで来た。ドーキンスの著作の素晴らしさは、理論の美しさもさることながら、その読みやすさにある。

ドーキンスの本を読むという行為には、世界的な頭脳の持ち主から、エレガントともいえる理論によって裏打ちされた学術的な事象を、分かりやすく時にはユーモアも交えて語ってもらっている喜びがある。生物学や遺伝学が専門でない僕のような人間でも、彼の本を読むと思わず「そうだったのか〜」と感じ入ってしまい、なにかとても贅沢なことをしている気分になる。

「神」について語った今回の著作もいつものように読みやすいが、ドーキンスには珍しく攻撃的だ。彼が意義を唱えるのは、万物を創造し、人の祈りに耳を傾け、人の行動や考えを知り罰や褒美を与える全知全能の「神」の存在と、その「神」の教えに従うのが尊いことだとする宗教のあり方だ。

「神」の名のもとに人々が殺し合いを続けている現在(過去も同じことが繰り返されてきたが)、「神」と宗教がいかに人の行動に関わっているかを考えることは大切だろう。

この本のひとつの面白さは、単に「神」の存在と宗教に反対の立場を取るというものではなく、何故「神」が存在していないと言えるかを科学・生物学の視点から証明しようとしているところにある。宗教が何故誕生し、現在も存在しているか、また宗教が存在しなくとも人のなかにはモラルが生まれること、そして宗教が人間にとっていかに危険かを進化論と結び付けて証明しようとしている。

しかし、これでドーキンスはある種の人々(それも数多くの人間)から痛烈な批判を受けるだろう。死の脅迫を受けるかも知れない。何があっても「神」を信じる。ドーキンスが言うように「信仰」とはそういうものなのだから。

“One of the truly bad effect of religion is that it teaches us that it is a virtue to be satisfied with no understanding.(宗教の真の弊害のひとつは、理解できなくともそれで満足することが尊いと説いているところだ)”とドーキンスは語っている。



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